漢文
鴻門之会における項羽の「黙然不応」と「諾」について 鴻門の楚軍陣地。項羽と沛公の仲直りの宴席で、范増が腰に帯びた玉玦を挙げ、何度も項羽に示す。玦=決であり、決せよの意。「沛公暗殺を決断せよ」というシグナルである。項羽はそれを黙殺する(黙然不…
『唐詩紀事』にある、詩人賈島の逸話、「推敲」の故事であるが、その中に出てくる「僧推(敲)月下門」の一句は「題李凝幽居」という五言律詩の第四句である。この詩は難解で解釈の分かれるところがある。(李凝は李疑とも) 題李凝幽居 賈島 閑居少鄰並,草…
県立図書館で「山形中央高等学校創立20周年記念誌」を読んだ。 昭和41(1966)年10月15日に行われた創立式典に来賓として参列した森戸は記念講演を行った。題目は「青年学徒に期待する」。その書き起こしが記念誌に掲載されている。今、その小見出しを列記し…
山形県立山形中央高等学校学習センター(図書館)の壁に掛けてある額 右から「學不厭教不倦」「学びて厭(いと)はず 教えて倦(う)まず」 原典は 『孟子』公孫丑篇 「…然則夫子既聖矣乎?」曰、「惡、是何言也! 昔者子貢問於孔子。曰、「夫子聖矣乎?」 孔…
漢文と古文を解いてみた。全問正解できた。難易度は高くないと感じた。聞くところ では、評論が解きにくかったようだ。 なお、古文・漢文は、隅々まで完璧に口語訳する必要は全くない。時間内に、傍線部 に関することが分かれば良いのである。自分もあやふや…
久しぶりの記事になる。 急な仕事が入って、6日から常勤になったので、その手続きやらでばたばたしていた。勤務先は車で45~50分かかる所である。季節が良いので苦ではない。今まで経験の無い小規模な職場で、まあ家庭的という感じである。とりあえず一ヶ月…
まず「良問」という印象である。高校生の学習事項を外れてはいない。難解な疑問・反語の句法は問われていない。共通のテーマに関する、詩と散文の両方を提示しているのが良い。「千里馬」と「伯楽」というエピソードを理解していれば、両者に共通するテーマ…
以下は、十数年ぶりに、知り得た原文から自分なりに読み下したもの。前出論文の返り点とは、第4面の一部が異なる。やはり第2面の3・4行と第4面がよく分からない。 かなりあやしい解釈のようなものも付けたが、果たして如何。 道澄寺梵鐘銘文 訓読試行 道澄寺…
道澄寺梵鐘銘文は国立国会図書館デジタルコレクションで見ることができる。これは拓本のようなのだが、陰刻のように白黒反転してあり、区画に分かれていない。 → 道澄寺鐘銘 - 国立国会図書館デジタルコレクション また以下に、「途上~書の道~書のことあれ…
「道澄寺梵鐘銘文」については、平成19(2007)年に一度訓読を試みたことがある。義理の従兄弟の鈴木氏から、遠縁のA氏が訓読を試みているので手伝ってくれないかというような依頼をされたのだった。今はお二人とも他界されている。 A氏は、鈴木氏の先祖で左…
大学入試センター試験も来年で終わり、再来年からは記述式の新試験になるそうだ。本当にできるのか疑問ではある。マークシート・リーダーは使えないだろうが、それなら一体誰が採点するんだろう? 県立高校入選の各校毎300枚くらいの採点でさえ、3人掛か…
大手予備校で発表している国語の平均点予想が、試験直後から次第に下がって、今は103~102点といったところになっているようだ(後日追記 結局104.7点に落ち着いたようだ)。 自己採点の結果を見て、各問の簡単な分析をしてみた。問題は日曜の新聞に出…
東京書籍「古典A」の教科書は、『烈女伝 孟母断機』で(曰、「…則為虜役矣。」)の「矣」に「ト」を送っていることに気づいた。ここは当然、「為」の後に「ラント」と送るべきだと考えて、生徒にもそう言ったのだが、教科書を見せられて驚いた次第。迂闊だっ…
大問四 問7 傍線D 豈荘子所謂以無用為用者比耶。 上の文は一見すると「豈~耶」が反語形であると考えられる。しかし本文の内容から、ここでは軽い疑問形になっているのである。このような疑問形は相手に答えを要求するのではなく、自分の考え・判断を示す…
直前講習でセンター試験過去問を解いていると、次のような一文が出て来た。以前に何度か見ているはずだが、あらためて少し考えてみる。(あくまで素人考えですので、間違いなどご指摘いただけましたらありがたいです) 「詎知薫染既深後雖欲進乎杜也可得乎。…
「是」・「之」・「此」を「これ」と読む場合の送り仮名について 2012.11 Ⅰ 「是」・「之」「此」と「レ」を送らない場合 ① 代名詞的用法 (目的語や補語になっている。ほとんどが「之」であった。) 「之」 何ゾ鉛丸ヲ発シテ之ヲ撃タザル。 倉ノ粟ヲ取リテ…
注1 たまたま目に触れた大修館書店「漢文教室」一八六号(平成十二年五月)掲 載の小出貫瑛氏の論「項羽の「笑い」―「項羽本紀」の感情表現」でも、人間性を 呼び起こされたものとされている。 教科書指導資料の例を挙げると、「楚の名将の血を引く自己の誇…
(3の続き) 伍子胥列伝第六に「人衆多勝天、天定亦能破人」とある。一時的には人が主導権を握っても、最終的には天命が勝ち人事は破れるというのである。だから、項羽のように、人間の身で運命に反抗できると思うのは誤りである。項羽本紀の太史公論賛に見…
(2)の続き 6、「笑」の検討 「天が私を亡ぼそうとしているのに、どうして渡れようか!」 この言葉の意味は、予定された運命に従おうということではない。 項羽にしてみれば、これまで天が自分に与えた窮地をすべて自力で脱し、九死に一生を得てきた。今…
(1)の続き 5、「天之亡我」の検討 「天之亡我」。この言葉は項羽本紀後半に三回現れる。最後の一回を除いて、いずれの場合も「非戦之罪」と対比されて出てくる。これは、「現在の状況は、自分の戦いの仕方が悪かったせいではない。」と読める。項羽は二…
以下の文章は「山形北高校研究紀要第30号(平成13年3月)」および「山形県高校国語教育研究会研究紀要第34号(平成13年3月)」に掲載したものの再掲です。若干字句を修正してあります。 1、初めに 『史記』から教科書に採録されることの多い「項王自刎」と…
漢文に関わる疑問について考える書庫を作りました。 項王曰、「壮士。能復飲乎。」樊噲曰、「臣死且不避。卮酒安足辞。夫秦王有虎狼之心。殺人如不能挙、刑人如恐不勝。天下皆叛之。懐王与諸将約曰、『先破秦入咸陽者、王之。』今、沛公先破秦入咸陽。毫毛不…