2022年度共通テスト、漢文・古文問題を解いてみた

 漢文と古文を解いてみた。全問正解できた。難易度は高くないと感じた。聞くところ

では、評論が解きにくかったようだ。

 なお、古文・漢文は、隅々まで完璧に口語訳する必要は全くない。時間内に、傍線部

に関することが分かれば良いのである。自分もあやふやな部分は後で辞書を引いて調べ

た。ましてや学者でも意見の分かれる部分も多いのだから。

 

 〔漢 文〕

 今回の漢文問題は基本的な語意と句法と漢詩(近体詩)の知識で十分だろう。授業を

聞いていれば分かる。容易な問題と感じる。清代の詩とその序文であるが、語彙は簡明

で、全体がまとまっていて分かり易い。作者について何も知らなくても全く支障ない。

 リード文は必ず、しっかりと読まなければならない。


問一 漢字の意味
 復 「ふたたびまた」である。「また」と読む字は、この他に序文中に「又」があ

   る。「是ノ園モ又」で「もまた」だから「亦」であれば高校生には分かり易いと

   思う。

 審 「つまびらかに」 …現代文のような出題。

 得 「~をう」 まずcanかgetかを区別すれば良いのだが、下が体言ならget(手に

   入れる)、用言ならcan(~できる)となる。ここは「形色」だからgetと思う

   が、抽象名詞だから手に持つことは出来ない。「理解する」とか「習得する」と

   かの意味になる。

問二 白文に対して、訓点と書き下し文のセットを選ぶ

  一見して「~ニ~(スル)者有リ」のパターンであるから①と⑤は消せる。また

  「呼之」「入匣」が前の行にあり、蝶を入れて作者の園に持って来て、開けたら

  「空匣」だったという落ちもあるのだから、②③④のいずれかである。あとは

  「帰」を「帰る(自動詞)」と読むか「帰す(他動詞)」と読むかの違い。「呼」

  「入」「帰」はすべて蝶を目的語にしていると見えるし、「客」がどういう人物か

  だが、作者の園の者ではないだろう。句読点がないのは気にしないでいい。

問三 部分解釈

 「苟」 「いやしくも」が読めるかどうか。仮定形であり、下は順接仮定条件の

     「ば」で受ける。④のように逆接仮定条件「とも」になる場合もあるので注

     意が必要。

 「当」 再読文字「まさに~べし」が読めて、訳し方が分かるか。

     いずれも基本的知識である。「苟くも吾に近づか(け)ば、吾当に之を図(ゑ

     が)くべし(べけん)。」

問四 空欄補充、詩の押韻

 まず形式だが、絶句と律詩の区別ができないのは論外。③か⑤になる。どちらの選択

 肢も、対句や押韻の位置についての説明部分は正しいので、あとは他の韻字と同じ韻

 かどうかの判断になる。これは音読みして簡単に判別できる。「多」(ta)・「何」

 (ka)・「羅」(la)・「過」(ka)だから、答えは「歌」(ka)になる。下平声

 歌。中国音はge(一声)。

 なお、「香」を(ka)と読むのは訓読みになる。引っ掛けかな? 音は(kou)。下

 平声陽。中国音はxiang(一声)

 ②だけ古詩とするがそれは無い。

問五 疑問・反語の句法

 「~ヲ奈(如)何セン」が読めるかどうかだけの問題。『史記』「四面楚歌」で「虞

 兮虞兮奈若何」を読んだだろう。

 頷聯が対句なので「留我住」と「奈春何」が照応している。「我ヲ留住シ」「春ヲ奈

 何セン」という感じなのだろう。

問六 エピソードの順序

 「呼之落扇」、「蝶落其袖」とある。「扇」の後に「袖」であるから④か⑤である。

 その間に満州人の家の園に現れ、また作者の園の台に現れているから⑤になる。

 誤答する人は詩の内容を混同し、春城や董思翁を選んでしまうのか?

 なお、「辛未秋」から「壬申春」、「秋半」と都での一年間の出来事であることが分

 かる。十干十二支の知識が無くても注を見れば書いてある。詩はその翌年の春に詠ま

 れている。

問七 心情の読取り

 本文に無いこと、本文と違うものを含む選択肢を排除してゆけばよい。

 誤答する人は明代の董思翁の蝶や竹のエピソードと、清代の作者の体験を同時期と思

 ってしまうのだろうか?

 

 

 〔古 文〕
 人間関係は中心的登場人物が三人しか居ないので分かり易く、敬語からの判断も比較

 的容易かと思われる。文章Ⅰ・Ⅱとも、二条への敬意は無い。ただ、敬語の基本が身

 についていない人は大変だろうと思う。

 状況を把握するには、問題文の前にあるリード文をよく読むということが絶対に必要

 だ。初見の者に、何が書いてあるかを親切に教えてくれているのだから。

 『とはずがたり』には後深草院の女性関係が書かれているが、問題文は『増鏡』との

 共通部分を取り上げていて、女性の私的自伝的回顧と歴史物語との差異を考えさせた

 りして、大学で学ぼうとする生徒に問題意識を誘発させようという意図が感じられ

 る。まことに古典の世界は深いのだ。

問一 語彙

 「まどろむ」は理解できるだろう。「れ給はず」の「れ」は、可能の「る」であっ

 て、尊敬ではない。打消しの「ず」と併用されている。

 「ねびととのふ」は、「若紫」の授業で「ねびゆかんむさまゆかしきひとかな」を読

 むから知っているだろう。

 「おほかたなるやうに」の「おほかた」もそう迷わないだろう。

問二 部分読解

 一文を五つに分けて、それぞれが誰のどんな気持ちを表しているか問う。

 選択肢②と④に文法事項(助動詞の意味)があるが、それが正しくてもこれだけでは

 決定できない。「けむ」は「過去推量」だろうが「なむ」の「む」は「意志」ではな

 い(「止まむ」を「ぬ」の未然形で強めている。「止めむ」の強意なら「止めな

 む」)。

問三 部分説明、院の言動からその人柄を推測する。

 傍線部は「せちにまめだちてのたまへば」だけである。「心底まじめな顔でおっしゃるので」くらいの意味か。「まめだつ」の「まめ」は、『更級日記』の「まめまめしきものはまさなかりなむ」とかで読んだかも知れない。「だつ」が本心からではなく表面的に装っている様を表している。前段に「けしからぬ御本性なりや」とも言われているので、「誠実」であるわけがない。「せちに」を重視すると①でもよさそうだが、二条と斎宮はもともと「さるべきゆかりありて睦ましく参りなりなるる」という関係なのだから、今から親しくさせる必要はない。

問四 空欄補充、内容や表現の理解

 X ③④は書かれている事実に反するので消せる。②は「次第に深まっていく」が違

   うのだろう。「いかがすべき、いかがすべき」「導け、導け」と繰り返しがある

   ので①。

 Y ②、斎宮が世間離れしているのはいいが、「思ひつることよ(ほら、やっぱ

   り)」は「いつしか(もう早くも)、いかがすべき、いかがすべきと仰せあ

   り。」と、院の好色な性癖を知り尽くしている二条があきれているのであって、

   院はまだ直接に斎宮を口説いてはいない。

   ③、斎宮に院との関係を要求しているのであって「注意を促している」のではな

   い。この辺は高校生には良く分からないか? 

   ④、二条は、「御供に参らむことはやすきこと」だし、文章Ⅰでは「いかがたば

   かりけむ」と言われているくらいだから困惑などしていないだろう。

 Z ①、「権威主義的で高圧的な一面」は無い。

   ②、「三人の恋心」、三角関係ではない。

   ③、確かに歌は省略しているが、そもそも歌の内容が違う。

   ④、「いと心憂しと思せど」と斎宮の心情が記してある。

 

 やっぱり後深草院と二条との特殊な関係が分かりにくかったかな。授業では『とはずがたり』はやらないだろうからな。しかし、ドラマやマンガ、アニメで知っている世界かもしれないが。 (1月20日了)