#高校

鴻門之会における沛公暗殺計画への項羽の関与その他

鴻門之会における項羽の「黙然不応」と「諾」について 鴻門の楚軍陣地。項羽と沛公の仲直りの宴席で、范増が腰に帯びた玉玦を挙げ、何度も項羽に示す。玦=決であり、決せよの意。「沛公暗殺を決断せよ」というシグナルである。項羽はそれを黙殺する(黙然不…

推敲の故事 賈島の詩

『唐詩紀事』にある、詩人賈島の逸話、「推敲」の故事であるが、その中に出てくる「僧推(敲)月下門」の一句は「題李凝幽居」という五言律詩の第四句である。この詩は難解で解釈の分かれるところがある。(李凝は李疑とも) 題李凝幽居 賈島 閑居少鄰並,草…

2022年度共通テスト、漢文・古文問題を解いてみた

漢文と古文を解いてみた。全問正解できた。難易度は高くないと感じた。聞くところ では、評論が解きにくかったようだ。 なお、古文・漢文は、隅々まで完璧に口語訳する必要は全くない。時間内に、傍線部 に関することが分かれば良いのである。自分もあやふや…

『赤い繭』

安部公房『赤い繭』、久しぶりに授業した。授業では比喩を解くことを中心にした。また主題に関していろいろな生徒の考えを聞いたが、否定もせず、自分の解釈も示したが、どれが正解と言うことではなく、いろいろあってよいということで終えた。 この作品は、…

雑感 2021年5月9日 常勤になった 芥川龍之介『英雄の器』

久しぶりの記事になる。 急な仕事が入って、6日から常勤になったので、その手続きやらでばたばたしていた。勤務先は車で45~50分かかる所である。季節が良いので苦ではない。今まで経験の無い小規模な職場で、まあ家庭的という感じである。とりあえず一ヶ月…

2021年度大学入学共通テスト 漢文問題を解いてみた

まず「良問」という印象である。高校生の学習事項を外れてはいない。難解な疑問・反語の句法は問われていない。共通のテーマに関する、詩と散文の両方を提示しているのが良い。「千里馬」と「伯楽」というエピソードを理解していれば、両者に共通するテーマ…

2019大学入試センター試験 漢文

大学入試センター試験も来年で終わり、再来年からは記述式の新試験になるそうだ。本当にできるのか疑問ではある。マークシート・リーダーは使えないだろうが、それなら一体誰が採点するんだろう? 県立高校入選の各校毎300枚くらいの採点でさえ、3人掛か…

2019大学入試センター試験 古文

センター試験の古文・漢文を解いてみた。一、二箇所少し迷ったが全問正解した。全体的にはかなり容易だった。受験生にとっても解きやすかっただろう。 古文は中世の物語である。狐が人間に化けて思う人の元に近づくのだが、男でなく相手の姫君と同性の娘に化…

2018大学入試センター試験 漢文の問題分析

大手予備校で発表している国語の平均点予想が、試験直後から次第に下がって、今は103~102点といったところになっているようだ(後日追記 結局104.7点に落ち着いたようだ)。 自己採点の結果を見て、各問の簡単な分析をしてみた。問題は日曜の新聞に出…

会話文の文末が置き字「矣」である場合の、引用の送り仮名「ト」の位置について、教科書による違い。

東京書籍「古典A」の教科書は、『烈女伝 孟母断機』で(曰、「…則為虜役矣。」)の「矣」に「ト」を送っていることに気づいた。ここは当然、「為」の後に「ラント」と送るべきだと考えて、生徒にもそう言ったのだが、教科書を見せられて驚いた次第。迂闊だっ…

徒然草序段の解釈について~「ものぐるほし」を中心にして

『徒然草』序段の解釈について 「ものぐるほし」を中心にして 一、はじめに [つれづれなるままに 日暮らし 硯にむかひて 心にうつりゆく よしなしごとをそこはかとなく 書きつくれば あやしうこそ ものぐるほしけれ] 徒然草序段は、日本人になじみの深い文…

源氏物語 蛍の帖の几帳に関わる一解釈

今、源氏物語で蛍の帖をやっているのだが、この部分はあまり授業でやったことがない。ざっと流れは分かるのだが、教科書(第○学○社)の下段注とか指導書を読むと混乱してしまった。少し考えてみたので以下にメモしておく。 「東おもて」が東側の廂の間だとい…

平成二十六年度大学入試センター試験国語(漢文)問題について

大問四 問7 傍線D 豈荘子所謂以無用為用者比耶。 上の文は一見すると「豈~耶」が反語形であると考えられる。しかし本文の内容から、ここでは軽い疑問形になっているのである。このような疑問形は相手に答えを要求するのではなく、自分の考え・判断を示す…

「詎知、~乎。」反語形が疑問形を含む?場合

直前講習でセンター試験過去問を解いていると、次のような一文が出て来た。以前に何度か見ているはずだが、あらためて少し考えてみる。(あくまで素人考えですので、間違いなどご指摘いただけましたらありがたいです) 「詎知薫染既深後雖欲進乎杜也可得乎。…

「是」・「之」・「此」を「これ」と読む場合の送り仮名について

「是」・「之」・「此」を「これ」と読む場合の送り仮名について 2012.11 Ⅰ 「是」・「之」「此」と「レ」を送らない場合 ① 代名詞的用法 (目的語や補語になっている。ほとんどが「之」であった。) 「之」 何ゾ鉛丸ヲ発シテ之ヲ撃タザル。 倉ノ粟ヲ取リテ…

『史記』項羽本紀、項王自刎の場面における項羽の「笑」について(注)

注1 たまたま目に触れた大修館書店「漢文教室」一八六号(平成十二年五月)掲 載の小出貫瑛氏の論「項羽の「笑い」―「項羽本紀」の感情表現」でも、人間性を 呼び起こされたものとされている。 教科書指導資料の例を挙げると、「楚の名将の血を引く自己の誇…

『史記』項羽本紀、項王自刎の場面における項羽の「笑」について(4)

(3の続き) 伍子胥列伝第六に「人衆多勝天、天定亦能破人」とある。一時的には人が主導権を握っても、最終的には天命が勝ち人事は破れるというのである。だから、項羽のように、人間の身で運命に反抗できると思うのは誤りである。項羽本紀の太史公論賛に見…

『史記』項羽本紀、項王自刎の場面における項羽の「笑」について(3)

(2)の続き 6、「笑」の検討 「天が私を亡ぼそうとしているのに、どうして渡れようか!」 この言葉の意味は、予定された運命に従おうということではない。 項羽にしてみれば、これまで天が自分に与えた窮地をすべて自力で脱し、九死に一生を得てきた。今…

『史記』項羽本紀、項王自刎の場面における項羽の「笑」について(2)

(1)の続き 5、「天之亡我」の検討 「天之亡我」。この言葉は項羽本紀後半に三回現れる。最後の一回を除いて、いずれの場合も「非戦之罪」と対比されて出てくる。これは、「現在の状況は、自分の戦いの仕方が悪かったせいではない。」と読める。項羽は二…

『史記』項羽本紀、項王自刎の場面における項羽の「笑」について(1)

以下の文章は「山形北高校研究紀要第30号(平成13年3月)」および「山形県高校国語教育研究会研究紀要第34号(平成13年3月)」に掲載したものの再掲です。若干字句を修正してあります。 1、初めに 『史記』から教科書に採録されることの多い「項王自刎」と…

而(しかも)の一用例について

漢文に関わる疑問について考える書庫を作りました。 項王曰、「壮士。能復飲乎。」樊噲曰、「臣死且不避。卮酒安足辞。夫秦王有虎狼之心。殺人如不能挙、刑人如恐不勝。天下皆叛之。懐王与諸将約曰、『先破秦入咸陽者、王之。』今、沛公先破秦入咸陽。毫毛不…