2019大学入試センター試験 古文

 センター試験の古文・漢文を解いてみた。一、二箇所少し迷ったが全問正解した。全体的にはかなり容易だった。受験生にとっても解きやすかっただろう。
 古文は中世の物語である。狐が人間に化けて思う人の元に近づくのだが、男でなく相手の姫君と同性の娘に化けるところがミソ。物語は登場人物、基本的な人物関係を読み取れないと解けないが、今回はさほど難しくは無かっただろうと思う。 

 傍線部(ア)
 「しづ心なく」→「ひさかたの 光のどけき 春の日に しづごころなく 花の散るらむ」で習う単語。 
 「思ひ奉りける」→「奉る」が謙譲の補助動詞であることは明らか。敬意が無い、あるいは尊敬表現になっている選択肢は×。謙譲は②か④。
 「こそあさましけれ」→「あさまし」は基本的古語。

 傍線部A
 「いたづらに」・「うらめし」の語意と「なむ」の識別。
 ここの「な」は「消え失せむ」を強調している、強意の助動詞「ぬ」の未然形。「消え失せ」は「消え失す」の連用形。

 波線部a
 「奉る」の敬意は謙譲。「見申し上げる」。敬意の方向は、地の文なので書き手から動作の受け手である姫君へ。

 傍線部(イ)
 「いかにして」の意味。文末(「と」で引用されている文の文末)に願望の終助詞「ばや」があるので「なんとかして~したい」の意味になる。「どのようにして~か」という疑問ではない。

 傍線部B
 狐の化けた娘が泣いていることについて、その思いを解釈する。直前の女房の思いと行動(良い相手と結婚させたいと縁談話を進める)、狐の本来の目標(高柳宰相の姫君に近づくこと)から考える。

 波線部b
 「候は」の敬意は丁寧。ここは動詞「あり」の丁寧語。敬意の方向は、会話文中なので話し手(女房)から聞き手(狐の化けた娘)へ。

 波線部c
 「侍る」の敬意は丁寧。ここは補助動詞「侍り」の連体形。敬意の方向は、会話文中なので、話し手(狐の化けた娘)から聞き手(女房)へ。

 波線部d
 「参らせ」の敬意は謙譲。動詞「参らす」の連用形。「与ふ・やる」の謙譲語で「差し上げる」の意味。「参る」+「す」かも、と思ったりするが、a~cで④と決まっているので確信できる。敬意の方向は、地の文なので書き手から動作の受け手である姫君へ。

 傍線部(ゥ)
 「この人の御おぼえのほど」→「人の御おぼえ」は『源氏物語(桐壺)』などで習う。

 問5
 主旨、狐の意図を解釈する。③が近いが「思いの丈を打ち明けよう」が本文には書かれていない。①は本文前半の狐の懊悩を踏まえているので最適。

 漢文についてはあらためて記述する予定。