道澄寺梵鐘銘文の訓読について その2

 道澄寺梵鐘銘文は国立国会図書館デジタルコレクションで見ることができる。これは拓本のようなのだが、陰刻のように白黒反転してあり、区画に分かれていない。

   → 道澄寺鐘銘 - 国立国会図書館デジタルコレクション

 また以下に、「途上~書の道~書のことあれこれ」というブログに、ブログ主所蔵の拓本が掲載されていたものを、筆者が無断で転載させていただきました。

   → 書 : 途上 ~ 書の道 ~ (livedoor.jp)

 この両者は一致しているので、これとA氏の起こしたものを比べると、A氏にいくつかの字の誤読があったことが分かる。(1月30日に一部訂正しました)

 

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第一面 この面に誤読は無い

 

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第二面 4行目「縁葛」6行目「欲」に注意

 

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第三面 3行目「匠」4行目「」5行目「海」6行目「梵」に注意

 

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第四面 1行目「師」2行目「自」5行目「法」に注意


 ここで言わずもがなのことだが、自分には故A氏の誤読を論う意図は全く無い。ただ先人に敬意を表しつつ、十数年前には手掛かりが無くて解決できなかった部分を、今読むことができたと示したいだけである。

 

 さらに「栄山寺鐘銘をめぐってー道澄寺小考」(野尻忠、東京大学日本史学研究室紀要第四号、2000)では、本文に返り点を施してあるので、どのように訓読しているかが分かる。

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  「縁」でなく「縁」、「」でなく「」、「欲」でなく「欲」だった。

  「所以」はやはり次の面から返読している。

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  「匠」でなく「匠」、「」でなく「」、「」でなく「」、

  「梵」でなく「梵」だった。

  やはり「令」の使役が下の長い対句、「長夜~知暁」と「苦海~通津」に掛かる

  ように読んでいる。

  なお、この論文では最後の行「銘」の下に「之」の一字が抜けている。

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  「」でなく「」(古代の工人の名か?)、「施」でなく「施」、

  「自」でなく「自」(この論文では新字体「伝」になっている)、

  「法」でなく「法」であった。

 

 

 書き下し文と解釈した内容については、余力があったら書いてみたいとは思いますが、少し疲れました。