卒業式雑感

 女子校の卒業式は歌が感動的だ。校歌合唱。仰げば尊し合唱。蛍の光。一緒に歌えるキーではない。答辞を読む声が途切れる。泣いているのだ。その涙の理由を、皆よく理解している。生徒も教員達も涙を流した。
 
 あまつかぜ くものかよひぢ ふきとぢよ をとめのすがた しばしとどめむ
 
 年年歳歳花相似  歳歳年年人不同
 
 行く川の流れは絶えずしてしかももとの水にあらず 淀みに浮かぶうたかたはかつ消えかつ結びて久しくとどまりたるためしなし
 
 いつも生徒がいる。しかし生徒一人一人を見れば毎年同じ人がいるわけではない。それを見ている自分は老いて、やがてその場を去るしかない。そう気づいてからずいぶんになる。その感じはますます強くなる。
 
 「生徒の力を信じ、育て、生かしてやる。」
 しかしその「育てる」という言い方はおこがましいと言われたこともある。それが定年退職した音楽科の教員の言だから一瞬驚いたのだった。
 
 教員に成り立ての頃、先輩に質問したことを思い出した。「先生って、何する仕事なんですか?」
 先輩曰く「良い質問だ。」
 池上さんじゃないですよ。もう30年以上前の話だ。