雑記

 雷洋事件。
 中国での警察官の非道横暴、司法の隠蔽怠慢。まあ珍しい事ではないが、この雷洋という人は中国人民大学大学院を出て循環経済協会に勤務し、環境保護活動をしていたようだ。共産党員で29歳。妻と生後2週間の娘がいた。今年5月、結婚記念日の夜、彼は私服(便衣)警官に買春の容疑で拘束され、暴行を受けて死亡したというのだ。警察官は微罪につきお構いなしとなった。これに対し知識人層は激しく反発しているようだ。
 村長のどら息子が村娘を暴行して殺害する。警察がそれを隠蔽するといった事件とも違って、何の政治性もないインテリ層がまきこまれたということが、自らの身の上に重ねて、彼らに(危険覚悟の)抗議の声を上げさせるのだろうか。

 路上に人が倒れて苦しんでいても誰も見向きもしない。関わり合いになるのを避ける風潮。すでに家族以外の者に対する「信頼」というものが失われて久しいのだ。人間関係然り、経済関係然り。
 中国から資本が流出するのは、国内で保護されるという信頼が一切無いからに他ならない。
 共産党は地主、資本家から財産を取り上げ、農民に分け与えた。しかしやがて全ては人民公社の下に共有となった。この「共有」は「平等」を意味しない。自分の物でないから惜しくもない。後先考えずに食い潰していった果てに、自主耕作地の保有が認められた。しかし、どこを(良田を)誰に分けるかについても不平等はあるわけだ。そしてまた、不動産バブルが起きて、農民は地方政府から土地を取り上げられ、農民工として根無し草のように彷徨っている。このように共産党政府は財産保護という面では全く信頼することができないものなのだ。

 PM2,5、毒の霧。公的機関の発表する数値は実際の値の2,2分の1なのだそうだ。日本の基準値の数十倍。もはや人間の生きる環境ではない。しかし青天が見られるのは対外的な公式行事のある日だけである。これも人命軽視の一例か。

 中国の夢だって? これは共産革命前夜の状況ではないのか? 腐敗を一掃するのなら「共産党貴族」を打倒して人民解放区を樹立すべきではないのか? 民族自決で、内モンゴルチベット東トルキスタンは独立すべきではないのか?
 しかしまた、一方で考えるに、アラブの春・カラー革命の後、それらの国々がどうなっているかを見れば、独裁政権打倒が即民主化の成功に繋がるわけではないのは明らかだ。今、中国共産党が倒れても、再び軍閥の割拠する大陸にもどるだけかもしれない(イラクアフガニスタンがもう一つ増える)。
 悩ましいことだが、中国のことは中国の人自身に考えてもらうしかないのだろう。日本はもう手を出せないのだから。