雨がみぞれに、ここ1週間は雪模様になる予報

 今、「日本はいかにして中国との戦争に引きずり込まれたか」(田中秀雄、草思社2014)を読んでいる。
 
 中国は辛亥革命清朝を倒し、中華民国になった。その国に日本が侵略戦争を仕掛け、東三省(満州)から北支へと蚕食していった、と言ったら納得してしまうだろうが、歴史はそんな単純な理解で済むものではない。無数の事件と思惑が絡み合い、偶然も手伝って世界は動いていく。
 教科書はその単純化された記述に過ぎない。教科書をすべて暗記したら世界史が完璧に理解できた、などと思う人はいないだろう。
 
 辛亥革命以降の中国の政治状況は混迷としか言いようがない。省、地域ごとに軍閥が支配し、互いに勢力争いをしている。政府が同時に2つも3つもあるような状況。日本は日清戦争日露戦争の結果得た権益を守るべく、条約、協定に従っているが、中国は反日、侮日の宣伝と教育を進める。
 当時の中国では兵を養うということをしない。日頃は博打をしているが、戦争になると督戦隊が兵の後から前線に追いやる。苛酷な扱いの中で過激な、異常なまでの暴力衝動が育てられ、それを戦場で爆発させる。戦いが終わればやりたい放題の略奪、暴行が黙認される。司令官も止められない。止めるのは3日後だ。 これが代々古参兵から新参者に伝えられて兵の常道となっている。
 この軍のあり方に、反○○の宣伝が作用すると、○○に対して非人間的な暴力が振るわれる。南京事件における各国領事館襲撃、済南事件、通州事件における外国人(多くは日本人、朝鮮人)虐殺などが起きた。犠牲者の遺体に加えられた鬼畜の所行は写真にも残されているが、当時の日本人の怒りを呼び起こした。
 
 ところが中国政府の対外的発表はまるで逆で、日本軍が無辜の中国人を虐殺したという話になっていた。以前に書いた妖怪やまびこの話のようなものだが、これを欧米のジャーナリズムが広める。日本は完全に宣伝戦で負けている。
 プロパガンダが暴徒を走らせる。若い学生などは簡単に乗ってくる。戦地となった町村では、中国軍によって男は子供まで兵士にかり出され、有無を言わせず戦わされる。足かせをはめて逃げられないようにして戦わせる。断れば残酷に殺されるだけだ。
 日本軍は仕方なく反撃するが、こういった中国軍の実状を知っていて、各地で敵兵の遺棄死体を埋葬し無名兵士の墓を作って弔った。
 
 近年の反日デモ日本大使館にものが投げつけられ、日系の商店やデパート、工場が焼き討ちにあったが、もしあの時、邦人に死傷者が出ていたら、そしてそれが残虐な仕方で殺されていたりしたら、私たち日本人はどのように反応しただろうか。戦前は中国軍が実際にそれを行っていたのだ。
 
 人間的感覚を持って当時の事件をリアルに見ていくならば、教科書で読むのとは違った心情的理解ができるだろう。