今日もいろいろあった

 朝から夕方まで校外で保健養護部会研究会。保健所からの報告と研究発表、講演。この講演がすごくおもしろかった。歯医者さんが大学附属幼稚園の園長さんになっている方。ただの歯医者と思うなかれ。教育(人間)について深く洞察し、それを分かりやすく表現する卓越した能力を備えた方である。役者さんかと思ったくらい芝居がかった(?)講演である。たちまち聴衆の心を惹き付ける。
 言葉が伝えるものが辞書的意味に受け取られるとは限らない。ある子供にとって「ママ」という言葉の意味するものが「やさしいママ」でなく「自分を拒絶する恐い人」である場合、先生との会話はどうなるか。知的障害者に対する時、「痛くないからね」と言っても絶対に拒絶される。その時、言葉を使わない、もっと原初的なコミュニケーションが必要である。相互の信頼を生むものは何か。乳幼児の頃から作られる人間信頼の基礎があって初めて、人間は健全に育つことができる。そこから見れば、現代の一部の母親の子育ての仕方には暗澹とさせられる。
 指導をしないで待つ姿勢。自分が最後にはクライアントから見捨てられることがカウンセラーにとっての成功である。その覚悟を持たねばならない。
 
 良い講演だった。その後帰校して明日の学校保健委員会の準備。生徒保健委員の、パワーポイントを使っての発表練習。発表はたった10分間だけど。
 
 
 県大会の審査員講評が届く。全上演校分ある。
 以下、本校に対する講評を掲載させていただきます。
 まず、本当に真摯に丁寧に観ていただいたことに感謝します。生徒の努力についても、とても良く評価していただきました。的外れな感想は一つもないと心底思いました。自分の脚本や演出の長所・短所もよく分かります。ありがとうございました。
 舞台を観ていない方々にとっては分からないことばかりでしょうが、こういう講評がありがたいという良い例としてあげさせていただきます。
 
 
  曳地伸之 氏(俳優・声優)
・コーラス(校歌)…印象的です。
・66年前の時代を思う、今の高校生の台詞の雰囲気が良く表されています。
・ベル~慌ててパニック。煙の効果が大変良く表現されています。
・演出席の位置と部員の位置…方向(演技を見ている)が気になります。(スタンバイ~スタート!と言う のがベストでしょうか?)
・ストーリー進行で観客の集中度と引き込まれ方が強烈になっているのに大変感心いたしました。
 (上記の、事実への接近の経緯、手法が成功していると思います)
・全員の集中度が高いです。
・転換~観客を集中させる作劇が素晴らしいです。
・部活動のテンションも高い雰囲気が伝わります。
・部員たちが演じるドラマの部分がもう少し長めに見たい感じになります。(意図もそこにあると思います が、少々ブツ切りの感がします))
・演技エリアが効果的に処理されています。
・現代の高校の演劇部活動のアプローチ(課題の取り組みと上演まで)…レベルが高いのに驚いて感心 しました。
・音楽の活用とエンディングも素晴らしいです。
◎以上 アトランダムに、拝見した感想を述べました。お疲れ様でした!

 
  板倉 哲 氏(青年劇場俳優・演出家)
 お疲れ様でした。謎解きサスペンスとして質が高く、また叙事的演劇としても史実の深みを伝える、水準の高い上演で、強烈な印象は観劇後何日経ても色あせていません。本当に感動しました。実際に部員の皆さんが取材されて芝居作りに取り組まれたという経緯をうかがい、そんな皆さんの姿勢にも感動しました。演技も地に足の付いた品の良いもので好感を持ちました。ただ残念だったのは史実の重みや面白さがあまりにも強烈で、現代の西高演劇部が色あせて見えてしまった事です。八重子が何故放火したのか? またはぬれぎぬだったとしても、戦時の教育に対する反発心はどこから生まれたのか? は実は「西高の生徒が何故このテーマを選んだのか?」「何故それ程こだわるのか?」と結び付いた時に大きなドラマになるような気がするのです。もしくは顧問に押し付けられて嫌々始めたとしても、長谷川たちをつき動かした内面(動機)は何か存在する筈です。「テストが嫌だった」からとか「支配者たちが仕組んだ冤罪に対する義憤」でも良いですが、それが部員によって語られれば、奥行きの深いものになったのではないでしょうか? または逆に、そういう会話は殆どはさまずに「仮説による再現ドラマ」のシーンを延々と続けるという手もあったかもしれません。その場合、西高の顧問は登場しない方が良いと思います。
 長々と書いてしまいましたが、この試みは是非継続して欲しいと思いました。もう少し改良されれば、超大作として全国制覇も夢ではないと思います。
 皆さんのこれからに大いに期待します。
 

  杉内浩幸 氏(宮城広瀬高校顧問)
 演劇部の稽古を繰り返していく劇構造。何度も何度も繰り返すうちに、その劇中劇のドラマと、部員たちのドラマが微妙に重なり合っていく。緻密に練り上げられた脚本が持つ難しいテーマに、果敢に取り組んだ舞台だったと思います。役者が正面を向いて、証言を繰り返していく舞台は、芥川龍之介の「藪の中」を映像化した、黒澤明の「羅生門」を想い起こさせました。次第に真実が明らかになっていくそのワクワク感が、大変スリリングな舞台でした。
 作る側はおそらくあえて、役者を前向きにさせたのでしょう。その意図はわかるのですが、それが単調さを感じさせたのも事実です。ただ、役者の立ち姿やセリフが美しいので、(そこまで計算したのか…だったら脱帽です)単調さを感じさせない緊張感もありました。
 炎のシーンは、正直言って、最初意味がわかりませんでした。まるで映画のワンカットのように挿入されたそのシーンが脳裏に焼きついて、劇が終わったときの違和感がしばらくの間、消えませんでした。
 瞬時にして人物の内面に急迫する仕掛けによって、伝えたいことはよくわかるのですが、一回しか見ないお客さんにとっては、かなり難しい「趣向」ではなかったかと感じられました。いずれにしても、志の高い、緻密で良質な舞台であり、かかるテーマに取り組んだ演劇部の皆さんと顧問の先生に深く敬意を表します。