劇団山形第74回公演「銀色の狂想曲」高橋正圀・作

 10月16日(土)18:30~ 山形市中央公民館6Fホール 上演時間2時間20分くらい(10分休憩含む)
 創立45周年を迎える劇団。客席に年配の男性、和服のご婦人が目立つのもうなずける。入場数は昼夜2回公演で600人ほどとのこと。
 作者は山形県米沢市出身。60代半ばの、今初孫が生まれようという寡婦が、年上の寡夫と不器用に恋愛感情を育み、双方の家族の後押しもあって再婚を決意するまでのお話。おもしろかった。楽しかった。しみじみと人生に根ざした笑いがある。劇団員が橋田ファミリーみたいに役どころを持っていて、それがぴったりはまっている。主役は看板女優のAN先生。お若い。息子役のIY先生が上手い。彼が高校生の頃にいっしょに芝居を作っているが、その頃から上手かった。もう1人、IY先生の後輩で全国大会最優秀に輝いたSK君も弟役で出演している。こちらは非常に真面目な方だが、演技ではすごいことをする。全国大会ではすごく変わった女の子役で笑わせた人だ。もっと若い女性で、自分が顧問をしていた高校のかつての部員も出ている。去年から劇団に入ったのだ。去年より落ち着いていた。衣装替えが多く、女性陣の衣装も楽しめた。皆さんお上手で、お芝居は満足できるものでした。劇団主宰の松井先生も益々お元気でした。あと、毎度の事ながら舞台美術がすごい。本職の建築設計士の方が図面を引いて作っているのだから当然である。舞台に合わせて角度を付けてある。奥で2間半の幅の部屋が手前では4間幅になっている。奥は庭に面したサッシ戸で、塀の向こうに街と山の遠見がある。本当にリアルに良くできている。ただ下手の玄関外に立つ人が少し見えにくかったか。照明は本職のTSさんだから安心して見られた。夕日の差し込みが綺麗だった。
 
 以下個人的なことですが、
 この劇団の芝居は、平成3年に「ああ・ウエディングドレス」を観て以来、何度か観ている。リアリズムの手法で作る劇は自分に大きなインパクトを与えた。演劇部顧問として独り立ちして、創作を模索していたがうまくできない。そんなときこの芝居を観て、ああ、これでいいんだと思った。普通に書けばいいんだ。普通の人間が普通に生きているように書けばいいんだ。何も特殊な舞台設定をしなくても、とてつもなくドラマチックな出来事がなくてもいいんだ。普通に会話して行動して、泣いて笑って怒って、それでいいんだ。― それで脚本が書けるようになった、という思い出のある劇団なのでした。