新庄北高校演劇部第20回定期公演

 6月6日(日)14時開演。新庄市民文化会館。「優シイ夜ニ降ル星ハ」作、タカハシナオコ 上演時間1時間。観客60~70。昨日まで観劇した山形市の高校の公演とは一線を画する、完成度の高い芝居であった。会場に入ると、すでにスモークが炊いてあって、緞帳の上がった暗い舞台にライトの光条が数本見える。 大黒幕を引き、黒い地絣を敷いてある。舞台装置は上手袖より5間ほど2尺8寸高の高台が続いていて、下手側で45度に折れ、7段の階段となって下りてくる。(階段は1段が4寸ずつ、つまり平台を重ねているのだ。)折れた部分の三角の隙間はあぶらげや台形の台を作って埋めてある。けこみも階段面も黒いパンチで覆ってある。台の前にサイコロ形のボックスが10個ほど置いてある。一見して、これから始まる舞台のすごさが感じられる。この高台には、中央奥に下りてゆく階段も付けてある。
 内容は、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」と賢治自身を重ね合わせ、ジョバンニ=賢治、カンパネルラ=トシという二役で構成されている。みんなの本当の幸せを探しながら、トシをも農学校の生徒をも誰も救えなかった自分を責める賢治。「永訣の朝」の「あめゆじゅとてちてけんじゃ」が随所にはめ込まれている。
 星球が二本のバトンに吊られ、2段階に点灯され、奥行きを出している。ずっとスモークが炊かれ続けるので、咳をする観客もいるが、舞台に様々な角度で切り込む光条が変化する様子は素人離れしている。最後には雨雪のつもりで、紙を降らせる。
 役者は立ち姿が良く、声も良く出ているし、なにより台詞が台詞になっている。芯の通った強い台詞のやりとり。聞いていて気持ちがよい。感情が通じ合い、深まってゆく。芝居に対する姿勢が真摯であるのが分かる。これに比べたら、昨日まで観た高校の芝居は、失礼ながら学芸会である。山形市に来て再演してみんなに見せて欲しいと思う(山形の高校生も3人ほど来ていたが)。
 幕後の挨拶もてきぱきとしていてすがすがしい。(緞帳はいったん下りて、また上がったまま終演)
 昨年の県大会でも良い演技を見せた高校だが、そのときは地元の劇団、東北幻野の長い作品を切り詰めて上演したため、東北大会は逃している。今回も、宮沢賢治を題材に取り上げてきた東北幻野の影響が少し感じられる。脚本は少し古くて、ガッチャマンやら狩人やらのギャグは今の生徒には通じない。(私には良く分かるが。)生徒達は、真面目に演じすぎるきらいもある。もう少し自分たちも楽しむところがあったら良いのかも知れない。2人が立って会話するところは、動きが止まるので少し眠くなったが、もちこたえた。
 観劇後、会館スタッフのKさんから電話。姿を見かけたので、感想などを、と言われる。素直にほめて、逆にいろいろ舞台について聞く。2日半かけて、仕込み、ゲネプロ2回という。音響は少し準備不足だったようだが(汽笛以外に音楽がもう少し欲しかった)、他は十分に準備されていた。照明は生徒が1人で操作(手動)したのだという。Kさんのサポートがかなりあったのは言わずもがな。
 新庄北は新入部員が0名。なんとか伝統を受け継いで欲しい。