山形演劇鑑賞会第343回例会

 エイコーン 「アンナ・カレーニナ」 作、レフ・トルストイ 脚色・演出、加来英治
 平成26年6月2日(月) 18:30席詰め後開演 20:55?終演 途中休憩15分
 山形市民会館大ホール
 
 長編小説の舞台化。栗原小巻主演。
 舞台は緞帳開いている。中央奥に高さ2㍍、幅2間ほどの橋。その上・下に階段。途中で折れて前に下りてくる。橋の下は部屋の壁、奥に出入りする。その左右には椅子とデスク。前は広い部屋。中央にテーブルのような腰掛け(最後には棺に見なされる)。これらを使い分けて、いろんな屋敷、それぞれの登場人物の部屋を表現する。
 黒い地がすり、セットもほぼ黒く、ホリゾントもあまり使用されないので全体に暗い印象が強い。話の内容に合っているのだろう。美術は石井強司。
 栗原小巻が衣装のデザインもしている。
 
 長編小説の舞台化の弊として、断片的なシーンの羅列になってしまっているのではないか。したがって、そこには登場人物の心理の深さは見えて来ず、表面的な台詞のやりとりと、それらしい仕草しかないようにも感じた。ヒロインへの感情移入も不十分で、なんとなく不満の残ったことであった。
 
 栗原小巻を見るための芝居で、原作の筋書きを借りているという感じか。それでいいのだろうが。 台詞で頻繁に触れられるキリスト教の教え=生き方は仏教徒の日本人にはなじみがない。当時の貴族階級のことなども今の人にはぴんと来ないのではないか。そうだとすれば、この話は大金持ちで美貌のご婦人の浮気話に過ぎなくなってしまう。「誰も私の苦悩を分かってくれない」と言われても、困った女だとしか思われないかも知れない。自殺に至る内面の(宗教的、人間的、社会的)苦悩など観客に迫ってくるべくもなかった、のではないか。