くずし字を読んでみた

 暇なので土産物の袋に書いてある字を読んでみた。

 (古文書小字典を買ったので使いたくてしょうがないということだ)

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 変体仮名のくずし字だが、濁点が付いている。半濁点をつけることもあるらしいが、あまり見たことはない。もちろん濁点はガザダバ行、半濁点はパ行にしかないが、昨今は「あ゛」とか「H゛とかも使うようだ。

 

 武かしよ里京能

  名物傳左可゛

   楚者゛さてハ

    蕎麦菓子

 

  むかしより京の

  名物 傳左が       (「傳左」は菓子店の尾張傳左衛門のことか)

  楚者(そば)さてハ

  蕎麦菓子

 

 

 そば屋の暖簾や看板の字は「生楚者゛」だったんだね。

 

 もう一つ。次は濁点が無い。

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 宇治橋能        宇治橋の         宇治橋

 那可き         なかきちきりは      長き契りは

 千支利ハ        くちせしを        朽ちせじを

 くち世しを         

 あやふむ        あやふむかたに      危ぶむ方に

 可多に         こころさわぐな      心騒ぐな

 こころ

 佐王具な

 

 『源氏物語』浮舟 薫の歌のようだ。

 

 過去の助動詞「き」がサ変動詞(「き」は連用形接続だが、サ変動詞の場合はその未然形に接続する)に接続して「せし」なのか、打消推量の助動詞「じ」が接続して「せじ」なのか、前後の意味を考えないと判断できない。

 …ああ、こんなふうに考えるのは高校教諭時代の病気だな。

 しかし自分には「世・せ」と「遠・を」、「佐」と「御」の区別などまだまだ難しい。崩すと人偏も行人偏も三水偏も変わらないし。

 

 

 補足 2例目で別バージョンの袋もあったので載せておく。一部仮名が違う。

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