場面に起こすやり方(我流)

 部活で自分がどんな指導をしているか。生徒演出が困ったときにどんなアドバイスをしているか。ちょっと書いてみよう。単純なことである。

 台本を場面に起こすとき、本読みの段階とは別の問題が出てくる。
 それは「役者相互の距離感」が一番大きい。本読みでは固定された席で台詞を言い合うが、舞台ではそんなことはない。立ち稽古に入って迷うのがここだろう。
 まず台本の台詞が要求する距離感というものがある。「その台詞はそんな距離では言わないだろう」という感覚が肝心になる。これ、とっても大事。
 その距離を確保するために役者の位置取り、その位置をとるための動きを考えることになる。これでほとんどの位置取りや動きが設定できる。もう少しいくと、声のする方向も考えられるので、それをもとに役者の位置関係を整理する。奥と前、上段と下段とか。整理された場面は見やすく分かりやすい。

 動きについては、高校生がやりがちなのが、台本に書いてあることをいっぺんにやろうとすること。
 「あっ」と叫ぶと書いてある場合、台詞と動きを同時にやる。しかし、何かの状態にあって、それが何かに気づいて急変し、声に出るという段階があるのだから、それを分けて表現するように言う。もちろん1秒の何分の一かの時間で展開するのだが、意識するのとしないのでは全然違う。

 「場面」というのは意味のまとまりだ。誰かが何かをするのだが、それが何を意味するのかが観ている人に伝わらなければならない。ここが高校生段階ではなかなか分からない。台本通りに台詞を言えば、動きをやれば観客に分かるし伝わるかというと、そんなことは無い。

 こういうことを考えないで演じていくと、芝居全体がすーっと進んで終わってしまい、薄っぺらな物になる。

 役者相互の関係、その変化が見えなければならないのだが、それをどう表現するかが演出なのだ。
 役者相互の関係で場面が作られるが、台詞を言っている役者がどんなに上手でも頑張っていても、相手が反応していなければ芝居は成り立たない。場面が上手く作れないとき、問題は台詞を受ける相手の側にあることが多い。その反応によって観客が理解することの方が大事なのだ。
 どんな講習会でも「台詞のない時も他の人の台詞を聞いて反応しなさい」と言われるでしょう?

 書いてみたらこれだけだった。台詞は相手を見てから言え、いっぺんにやるな(急ぐな)、距離を考えろ、反応しろ、みたいなことしか言ってない。
 ここから先は、重なるなとか、滑舌が、というような事になるが、上記の部分がしっかり作れていれば芝居はほぼ出来たようなものだと思う。

 以上、お粗末でした。