小劇場より高校演劇

 某講師の方が、懇親会の席で言われたことだが、東京の小劇場で公演する劇団の5000円とる芝居よりも、高校演劇の方がずっとましな演技をするのだそうだ。全部がそうとは言わないが。
 そういう意味で当地区の上演はだいぶ高い評価をいただいた。演技に細かい配慮がなされているというのは以前に別の方からもうかがったので、当地区の演技レベルはまずまずの所にあるのだろうと自負している。

 小劇場という、狭い空間で100名以下の観客に対して間近で演じる環境は、発声不十分でも演技未熟でも成り立つのかも知れない。日常会話と同じように台詞を言うべきだという考え方の芝居もある。そういうのを観て芝居を覚える高校生もいるのだろう。東京の地区大会参加校数は400校だったか? その規模で実施するために会場も複数で小規模、上演時間も短かったように記憶する。そこから全国に出てくる芝居はやはり声が小さく、間口が限られている印象がある(自分の経験が少ないだけかも知れないが)。

 高校演劇のコンクールは、全国大会・ブロック大会は1000席以上のホールで開催するのが常識になっている。ただ、山形県は県大会・東北大会も500席のホールでやったことがある。客席数はともかく、さすがにサス2本、極端に浅い袖という舞台では大きな大会は苦しかった。

 うちは毎年、部室(教室1つ)でのアトリエ公演、中央公民館(600席)での定期公演、市民会館(1200席)での学校祭上演・地区大会、県大会もたいてい1000席以上のホールでやっている。他に数年に1度、遊学館(300席)ホールでの公演もしている。来年2月にはシベールアリーナ(500席)で公演する。毎年いろんな広さのホールで演じているわけだ。
 会場の大きさに応じて何が変わるかというと、大きさに応じた適当な演目を選ぶということがある。この作品はどうしてもアトリエ公演向きだろうとか、これはダイナミックな美術で見せるべきだろうとか。台本の要求する広さ、つまり舞台間口と奥行きの問題になる。客席に声が通るか否かはそんなに心配しない(音楽とかぶる場合は別だが)。

 一般にコンクールを勝ち進む過程で、同じ演目を様々な大きさのホールでやらなければならない場合、ホールが大き過ぎれば間口を狭めるための補助袖幕とか黒パネルを用意することになる。といっても限度はある。昔、東北大会の2人芝居で、間口が2~3間と狭い上にパネルで囲んでいるので甚だ見えにくかった記憶がある。
 当初から上位大会の会場を考慮して、その舞台平面図を見て演目や装置を検討すればいいのだ。
しかし出発点の地区大会会場が小劇場のように狭いとなると、これは如何ともし難いだろう。上位大会では、広い舞台の真ん中だけで芝居をすることになる。無理に広くして演じると、距離感が狂って芝居がだめになる(がらりと変えるなら有りか?)。

 声が聞こえない、届かないということは当地区大会(1200席)ではあまりない。発声が徹底しているのか? 市民会館が声の通りやすい構造なのかも知れない。ただ、聞きやすい席と聞きにくい席というのはある。意外に上の方の席で聞こえたりする。まあ、観客入場数が少ないので、声が吸収されることも少ないのだろうが。
 
 「届ける」意識とか、子音・母音の明確化、息の仕方など様々な工夫や訓練方法もあるが、高校生は地声が大きい方が得だ。2年間でプロの俳優のように鍛えることは難しい。極端な話、審査員席で聞こえればいいので、20メートル届けばいいとも言える(あまり舞台の奥で台詞を言わない)。ブロック大会・全国大会のように満場の観客に聞こえるように届ける必要がなければ…。