劇団のら第10出撃

 平成26年2月28日(金) 18:00開演 18:43終演  入場数50くらいか  翌1日にも2回公演
 山形市民会館 小ホール  招待券で入場  当日券1500円(前売り1000円)
 「ジグザグ」 演出、安部裕輔
 
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 6編の短編集である。それぞれのタイトルと上演時間はおおよそ下の通り
 1、「女の子ビュッフェ」 作、伊藤穂 31分
 2、「上中下」 作、鹿目由紀(劇団あおきりみかん) 18分
 3、「心に少女が立っている」 作、新関麻美 14分
 4、「ジグザグ」 作、安部裕輔 3分
 5、「アルハイ少女ホープ Episode.0」 作、大庭千鶴 12分
 6、「つくりばなし」 作、柴幸男(ままごと) 23分
 
 小ホールは6角形をしている。1辺が舞台端になって、奥に1段高い舞台がある。フロアはダンスホール的である。今回は舞台を使わず、横の2辺を背にしてホール床面に舞台を設定していた。客席はこれに対面し、桟敷席、折り畳み椅子席、平台1枚上の椅子席、2枚上の椅子席、開き足上の椅子席で50席くらいあったか(後で少し追加したようだ)。
 客席の後にイントレを組んで、2間ほどの高さにライトを吊っている。1kw5本、ITO6本だったと思う。壁がくの字に折れているのでちょうど良いスペースができている。うまく考えたものだ。この他、上手になる調光室からと下手になる舞台前のサスからフロント明かりとトップを取っている。
 セットは中央に3尺ほどの高さの台。けこみはなくて不規則な斜め格子が入れてある。その上に一回り小さい1尺くらいの高さの台。階段は無く、前面の格子を足がかりにして昇降する。高台の両側に細長い(1間強の)直方体の枠組みがあり、底にライトが上向きに仕込んである。これが点灯すると枠上面から下がっている漏斗を逆さにしたような物に当たる。反射を狙ったものか?
 台の前に同じような細長い直方体が2つ立ててある。これが各話で様々に動かされてエレベーターや机、棚に変化する。
 上・下は6尺高の白いパネルが立ててある。二重になっている所を袖幕代わりにして出入りする。この間にも照明があるようだった。セットの後方には黒い大きめのパネルが立ててある。ローホリが3台あるらしく、背景の壁面に色がつく。他にも床面を照らす赤と青のライトが置いてあったり、かなり考えられた照明および舞台プランだと思う。
 もっぱらこの会場設定に感心していた。初めて見る形だった。
 
 芝居内容は、各話30分以内のものなので、「劇王」とかに出すような感じなのだろう。2話は実際、劇王の受賞作とのこと。この長さの脚本は戯曲というよりコントなのであろうが。
 
 第1話 劇団創作
 よくできている。3人の若い女友達が食事をしようというので集まるが、エレベーターの事故で20分間ほど閉じ込められる。その間の会話で、3人が実は1人の男とつきあっている、つまり二股ならぬ三ツ股をかけられていることが見えてくるという話。この持って行き方と心情の表現が上手で、笑いながら面白く観られた。
 
 第2話 劇王で評価された作品とのこと
 セットの高さを生かし、形而上(理性)、形而下(本能)、現実の3段階を表現。朝、寝床からなかなか起きられない1人の中の、3段階が葛藤する様を3人でおもしろく見せている。
 役者さんは、階層が変わったときの変化とかをもっと表現できたのではないかと思う。
 
 第3話 劇団創作
 客席から少女が登場する。舞台のもう1人の女と会話するが、2人の関係は、幼いときの自分あるいは別れた(死別?)娘と思われる。女は子供の頃女優になる夢を持っていたが、今は仕事に追われて疲れている。過去と現在の対話から、女の現在が癒されていくという経過なのだろうが、情報が不足気味なせいか自分には少し分かりにくかった。
 
 第4話 劇団創作 
10人が1列に並んで上手から次の人をビンタする。された方は何の反応もなく振り向いて次の人にビンタする。これが続いて、8人目くらいが嫌がって、「無理、無理」とか言っている。彼女は相手が叩こうとして挙げた手を押さえ抱擁する。しかし、次の人には平手打ち。
 まあ分からなくもないが、これだけで1本の作品とは言えないだろう。
 
 第5話 劇団創作
 老夫婦。身体不自由な夫がトイレで死んでしまう。その後、妻が惚けてしまい、愛用の縫いぐるみが語りかけるのを聞く。あなたは(美)少女ヒーローなのだといわれてその気になり、悪のボス(自分の息子)を倒そうとする。孫娘がそれを聞いて慌てるが、婆さんは実際に喪服姿の息子を見ると、あらイケメンとか言っておしまいになる。
 婆さんの狂い方がおもしろかったので、もっと暴れてもらって、ハチャメチャなバトルを期待したのが少し裏切られた感じではある。
 
 第6話 劇王受賞作とか
 全く売れない漫画家とその妻。250回(週)以上休載し続けている連載マンガのけりをつけようという話。ばかばかしい設定を、変に生真面目で理屈っぽい長台詞によって演じる。
 描けない夫に代わって妻がアイデアを出し、自分でも描いてしまうのだが、夫は妻に怒ったりしない。そこには作家としてのプライドも意地もないと見えるが、現代の「作家」(あるいは夫婦関係)はこういうものなのかもしれない。大きな裏切りの仕掛けがあったらおもしろいかとも思うが、それも古い世代の感覚なのかも知れない。
 
 
 全6話で1時間40分であるが、この時間を1本の作品で演じきる力はあると思う。女優陣が、地元大学サークルや他のアマチュア劇団に比べて質的に充実している感じである。(若い年代しかいないし、大きなホールになったらまた違うかも知れないが)
 しかし1時間半の芝居を作るには、30分の芝居(コント)を作る力の3倍ではすまない努力が必要だ。稽古の時間や場所の制限がある中では難しいのだろうが、「演劇」と言える作品で力を見せて欲しいとも思う。