観劇感想 9月~10月

 ミチゲキ2022(山形公演)

 

 

 於 やまぎん県民ホール3階「第2スタジオ」

  天井に鋼管が格子に組んであって照明を吊っている。

  舞台は1間半四方の黒パンチ。奥に黒パネル。その左右の暗幕が袖。

  客席は三段重ねの平台にパイプ椅子。1段に6~7人で最上段は音響席があるから平土間の列を入れて20人程のキャパだろう。

 

 『地底のアナキズム

    作・演出 藤島和弘 35分

    演劇ユニット 一揆の星 青森県

 『いつもなら、友だちとアスパラに囲まれて』

    作・演出 高橋成知 28分

    きのこ集団Protomass 福島県

 『越えてゆけ』

    作・演出 石川kenjiro-. 23分

    劇団@nDANTE 山形県 

 

 20代30代の人達の公演。こういった県外との交流が行われるのは良いことだし必要だとも思える。 (以下ネタバレ注意)  

 みんなアマチュアであるから、頻繁に、遠出して乗り込みで公演を打つことは時間と費用の点で難しい。そこで少人数、短時間、限られたスペースでの上演ということになる。乗用車1台に乗って積んで行ける程度になる。

 また東北6県企画として共通のテーマを設けて作劇している。今回は「距離」だそうだが、アフタートークでも言っていたように、必ずしも作品内容を束縛してはいない 。

 

 内容はいずれもシュールなものだった。一間半四方で、3人で、30分以内にまとめなければならないせいか、初めから「以下シュールです。虚構です」という始まり方になっている。ある意味、リアリティーを破壊して行く過程とも言える。その中で、地域の持つ問題(過疎)を浮き上がらせていった『地底のアナキズム』はそれなりに納得がいった。『アスパラ…』はその点不条理が勝ってメッセージが見えず、尻切れな感じになった。しかし役者さんの演技については、福島の方々はよく解放されているように感じた。『越えてゆけ』は、どこからファンタジーでどこから惚けかけの父親の妄想なのかよく分からない世界だった。個人的には、インプロ的な作り方はコントに流れそうで、観念的世界ではなくリアリティーを一度作って、次第に妄想や狂気に傾くという方が効果的なような気がする。

 

 

 

さんの会 2022秋公演

 

 於 やまぎん県民ホール2階「練習室1」

  音楽練習室らしく、壁や天井板が複雑な角度にしてある。グランドピアノが1台。

  客席は毎回35席。平土間にパイプ椅子。

 

 正面のピアノの前に朗読席がある。小さな平台の上に椅子、やや狭い感じ。前にはコロナ対策のアクリル板。高齢な方でも今回はマイクで声を拾う人はいなかった。声はよく練れている。

 毎回、藤沢周平作品を中心に構成している。今回は半藤一利のエッセイが入っていた。これには背景音楽にピアノが入った。朗読の合間にピアノの弾き語りも入るのでリラックスする。ピアニストがチャーミングな方なのでなおさらだ。家族的でよくまとまったチームであるから長続きするのだろう。

 

 

 

第68回山形地区高校演劇合同発表会

 

 於 山形市民会館大ホール 

 講師 佐藤陽介(アクション俳優・殺陣師)

    西尾敦子(県立天童高校演劇部顧問)

 

 今回は学校関係者(教職員、部員の家族など)のみ観劇できた。コロナのおかげで昨年は無観客だったのだ。久しぶりに大会の上演を観た。

 私立高校演劇部の参加が1校もなくなったのは寂しいことだ。長い歴史を持つ部をこのまま消してしまうのはもったいない限りである。

 上演はマスクなしだった。ただ、他校の仕込みや撤去の補助ができないため、幕間を長くしている。部員数の少ない部は舞台装置や照明を少なくする傾向になる。

 

 タイトルは上演順に以下の通り。既成台本は2本。顧問創作が2本。生徒創作が4本。

 『生まれ変わる場所』 作、本間正史(顧問) 山形中央高校

 『あるバス停にて』 作、上原範将(顧問) 上山明新館高校

 『卒業式の前日に前日が前日を』 作、岩野秀夫(既成) 山形市立商業高校

 『This is me』 作、山形南高校映画演劇研究部(生徒) 山形南高校

 『耽溺』 作、後藤咲輝(生徒) 山形工業高校

 『アルプススタンドのはしの方』 作、藪 博晶(既成) 山形北高校

 『屋上プレリュード』 作、岡崎未羽(生徒)+山形西高演劇部 山形西高校

 『ユメの邑』 作、村岡亜美・山形東高校演劇部(生徒) 

 

 結果としては、山形中央、山形工業、山形西、山形東の4校が県大会に推薦された。

 山形南がだいぶ時間オーバーしたようだが、地区レベルでは恒例として10分程度は問題にしない。内容的には面白かったので、選ばれなかったのは惜しい感じがする。

 既成台本は、山形北が全国最優秀作品にチャレンジしたが、前述の通り、大きなセットを組む余裕がなく、平台程度では球場スタンドの雰囲気を出すのは苦しかった。また、野球大会の効果音が重要なのだが、ミスが重なり、試合進行とストーリーの関わりが分からなくなってしまったのは残念だった。部室での、音を入れてのリハーサルの回数が少なかったのかも知れない。同じ既成台本でも山商の『卒業式の前日…』は、教室の外のテラス部分が主たる舞台なので、それなりにセットが組んであった。内容は「タイム・ループ」もので、今年の全国大会で青森中央が上演した作品と共通していた。落ち着いて演技していて、好感を持って観た。だが、少しおとなしすぎた。

 顧問創作2本、山中央の作品は県大会に出るのでここでは触れないでおく。しかし、顧問の力量は知る人ぞ知るものだ。明新館の作品はシュールな話で、「犬」役の人が出てくる。過去のある日の出来事が発端の、「謎解き」的な展開なのだが、そのせいで分かりにくくなっている部分があるようだ。テーマは、自分が約束を破ったために事故で友人を失い、自分はその負い目に縛られるようになった。そこからの「解放」である。

 生徒創作4本、いずれもよくがんばった。山形南高は、自称「邪眼帝王ドゥラクール」という生徒が、一人だけの演劇部員に対してその「生き方」を徹底的に否定、非難するという話である。邪眼帝王になりきっている生徒の存在が、ファンタジーなのか、ただ思い込みの強い奴なのかがよくわからないまま進行するが、次第に、以前は普通の子だったと知れてくる。面白いのは生徒が生徒を上から目線で容赦なく否定するところだ。クラス内で忖度する、自分のやりたいことも抑える、そんな生き方を徹底的に嫌悪し、もっと自由に生きろと言う。性同一性障害の男の子が、セーラー服で出てきて、帝王の過去を話すシーンは結構良かった。覚醒した生徒が自己肯定感の低い生徒を叱咤激励するようにも感じられ、生徒創作でそれが言えることが新しいように感じた。主演の子は5月の定演ではウオルト・ディズニーを演じていたが、そのときより自信に満ちて演技していた。山形工業、山形西高、山形東高とも県大会出場校なので、予断を持たせないようにここでは触れないことにする。

 県大会は10月29日(土)・30日(日)、山形市蔵王松ヶ崎の東ソー・アリーナ(以前のシベール・アリーナ)で開催されるが、関係者に限って入場できるということだ。

 県大会出場校は、庄内地区から酒田東、鶴岡中央。最北村山地区から新庄南、天童。置賜地区から置賜農業、高畠。計10校の上演になる。