劇団山形第77回公演

 「日暮町風土記」 作、永井 愛  演出、角川博
 11月16日(土) 13:00開場 13:30開演 15:39終演 挨拶終了15:42
            夜の部は18:00開演
 山形市中央公民館ホール  入場数300~400か(未確認)  招待券で入場
 
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 愛媛県の港町、日暮町。今はみかん栽培だけが盛んで、年々古い建物が取り壊されていく。歴史を誇る和菓子屋「大黒屋」も移転、引っ越しを済ませ解体を待つばかり。そんな日、町並み保存運動の中心である波子先生や、東京から来た遍路という山倉が、実測図を残そうとする。大黒屋の主人夫婦とそのぐうたら息子、ミカン農園の父・息子や波子先生の姪、町並み保存運動に加わる明日香などが繰り広げる騒動の1週間を描く。まさにオーソドックスな新劇という感じ。皆さんとてもうまい。
 ラストで山倉の正体が分かるが、これは観客には予想されたことで、驚きは薄い。しかし、山倉の職責を離れた個人的心情が強く出て、それが波子先生との別れと重なってかなり良かった。
 山倉役の方はいつもながらうまい。ミカン農家の水間とその息子も実に良い味で舞台を引き立てている。
 
 緞帳上がると一杯に江戸時代築造の民家。和菓子屋として使われていた。背景は黒幕。全体に黒い地がすり。中央に尺高の座敷。奥は2間の格子窓と3尺の壁。格子窓の上の壁は斜めに自然木の梁。手前は3間。上手の壁(1間半)が客席に向かって開いている。壁は高く2間半くらいある。襖から出入りする。座敷の壁から上手は障子(出入りしない)。その上の壁も高い。そこから2段で下りて手前から袖に入る出入り口が作ってある。上手は衣装部屋や蔵。
 下手は広い土間に下りる。その頭上には太い丸太の梁が出ている。土間奥に裏口の格子戸があり、外から出入りする。格子戸と格子窓の奥には灌木が見える。土間の下手に井戸。石組みの四角い囲いに木の蓋がしてある。この水を使って菓子を作っていた。壁には下手への出入り口が作ってある。下手は工場や店か。取り壊しを待つばかりなので建具以外の家財道具は無い(最初に電話だけある)。
 
 いつもながら素人離れした立派な舞台美術である。照明もよく見えて時間変化も見せる安定したものである。舞台運びも慣れたもので安心して観ていられる。
 演出も作品の肝を捉えて間違いなく、役者さんの良いところを存分に発揮させていた。
 衣装や小道具もきちんとしていて、芝居に集中できる。
 
 ただ、脚本としては2時間の中にいろいろな人間関係を織り込んでいて、それが芝居を動かす十分な力になるかどうかはアマチュアにとって難しいところだったかもしれない。前半、客席が大分眠そうな空気だったのはそこのせいかもしれない。
 
 再来年が劇団創立50年だという。終わりの挨拶で、それまでみなさんお元気でと言っていたが、観客の多くが50年を経て高齢化している。しかしまた若い人が観に来ているのも確かで、この人たちを演劇に惹き付けて活動を続けられるかどうか、劇団の正念場であるのかもしれない。