山形演劇鑑賞会第322回例会

俳優座劇場プロデュース 「家族の写真」 
作、ナジェージダ・プトゥーシキナ  演出、鵜山 仁
平成22年12月18日(土)18:30~ 山形市民会館大ホール
上演時間2時間15分(休憩15分、2幕)
 
 ロシア現代作家の作品。クリスマスから新年にかけてのモスクワのお話。母1人、オールドミスの娘1人の家に間違って男が訪れるところから話が始まる。娘は体の悪い母の願望に即した嘘(半ば冗談)をこしらえ、男を結婚相手のように扱う。男もしだいにその気になる。やがて、娘の娘と名乗る女の子が登場。話は混乱してくるが…。
 7寸ほどの高さになった床。これは回り舞台が仕込んであるから。盆の直径は約4間。盆の上に高齢で足が不自由な母のイスやテーブル、本棚、裏側に台所の流し台、電話などが並べられている。盆の回転と共に居間から台所へ、玄関へと場面が転換される。その際に照明が微妙に変化して同調する。上手い。 
 冒頭、暗い(非常灯も消してある)中に登場した役者がローソクに灯をともす。3本。これが背後の壁に影を投げかける。壁は装飾が無く、高く、角はテレビスタジオのように丸くなっている。上手に出入り口の穴がある。両方の花道から数本のライトが舞台を照らすと、舞台上の物の影が壁に映る。最初のローソクの効果が再現されるのだが、盆の回転と共に影が壁を動いてゆく。不思議な感じである。盆の上と外に柱が1本ずつ立っているが、呼び鈴のスイッチとか、電灯のスイッチがある設定。
 
 4人だけの舞台。ときどき会話についていけなくなってしまう時があった。ロシアのこの家庭の状況がよく飲み込めないからだろうか。母のためにディケンズを朗読する娘。先祖代々の宝石が箱いっぱいある(本物だが、財産には執着していない)。父は若い頃に亡くなったらしい。ソ連が崩壊してからずいぶんになるが、この人たちはそれ以前からどうやって生きてきたのだろうかと気になる。
 偽装家族が本当の家族のように信頼し合うようになる、その御伽噺が、現代のロシアの人たちにはどのように受けとめられているのだろうか。今の日本の自分には理解できない部分がある。しかし、同様のことはこの日本でも日常的に起きているのかもしれない。
 
 役者さんは上手い。ターニャは美しい。ジーナは本物のロシア娘のように見えた。ただ、6間ほどの間口の下手端、舞台から客席に降りる階段のところで結構大事な芝居をするので、見えにくいというかもったいない。回り舞台にした結果、玄関外の設定がこうなってしまうのは仕方がないのかも知れないが。
 
 最後、新年を迎える夜。2人のサンタクロースが現れてハッピーエンドになり、壁のむこうに雪が降りしきる(ロシア正教では新年とクリスマスが重なるらしい)。
 
 東北公演30ステージの千穐楽。運営担当サークルだったので、会場係とバラシの手伝いをした。その後、劇団の皆さんは大いに打ち上げを楽しまれたでしょう。