県大会を振り返って

 本校は「優秀賞第一席」でした。12校中3位。ブロック大会での生徒講評委員を担当することになるはずです。
 ブロック大会への出場はなりませんでしたが、満足しています。この作品は、ここで終わる運命だったのでしょう。あまり多くの人にお見せするようなものではないのかも知れません。自分も、この脚本をHPで公開することは考えていません。実在の人の、実際の事件を扱っていますので、たとえ仮名であるにせよ、これ以上不特定多数の人にお見せするより、ここで終わりになるのが良かったのかも知れません。また、この作品の上演は、「犯人」の後輩であり実際にこの事件の取材に当たった本校生徒だけに許されるのであって、他のどんな高校生にもこれを演じる資格はないと思うのです。だからこの作品は、もう二度と上演されることはないでしょう。
 生徒が生徒を演じるのは難しいと言われます。それも確かです。しかし、本校生以外に誰がこの「犯人」の実像を追い、その心情に迫れるでしょうか。現在の現実の演劇部員と劇中の現在の演劇部員、そして劇中劇の過去の女学生たちは重層的に重なり合い、最後に1本の軸でつながるように演じられます。その軸はやはり、同じ学校に学んだ先輩後輩という精神的紐帯でありましょう。舞台では、先輩の無実を信じたいという現在の生徒の切なる心情と同時に、「犯人」とされた方の過去の悲しみが溢れ出ていたと思います。
 現在の生徒とのリンクを考えた場合、過去の話を再現して「時代劇」とするのではなく、あるいはタイムスリップを持ち出すのでもなく、今回のような構成にするのが唯一有効な方法だったのです。(今の私にとっては、ですが)
 劇中劇以外のところの部員たちの人間関係が不明確だった、というご指摘を審査員の方からも、他の先生方からもいただきました。確かにそうだと思います。でも上に書いたように、この作品で伝えたいことは、あえて部員個人の抱える状況と重ねなくても、一つの事件に対する興味関心という一点から描かれればそれで良かったのだと思っています。例えば、主人公の長谷川が劇中劇の中沢と同じようにカンニングの疑いをかけられているとか、この劇を何としても完成しなければならない事情があるとかいう設定などは、かえって邪魔だったのです。
 まあ、部長役が顧問の先生と近い関係に書かれていて、他の部員とはちょっと違う立場だとか、なんとなく協調していない浮いている部員とか、余り立場の強くない演出とか、書き分けたつもりもあったし、演出もずいぶんと考えて演技をつけてくれたのでしたが。
 創作脚本賞もいただきましたが、これは、熱心に取材した生徒たちに献呈したいと思います。
 
 他の部の発表に関しては、今、書く余裕がありません。少しお待ちください。