令和7年度大学入試共通テスト「古文」を解いてみた

第4問 古文

問1 部分解釈(ほぼ語彙力)

  ア 「いはけなし」形容詞  「幼い」(「若紫」いはけなくかいやちたり額つき)

    「いはけなより」の方が分かりやすいが、「いはけな(ありし)より」のようになっているのだろう。

  イ 「なかなか」副詞  「かえって」(「若紫」なかなか長きよりもこよなういまめかしきものかな)

  ウ 「呼ばふ」「ののしる」動詞  「呼び続ける」「大声で騒ぐ」

    「動詞+ふ」は反復・継続のニュアンス

 

問2 敬語の種類、敬意の方向 基礎知識があれば理解できる。

  敬意の出発点は、地の文では「作者」から。会話文では「会話主」から。この二通りしかない。

  a と読みたまへる御声  地の文(作者から)、尊敬補助動詞(動作主=祈祷する座主へ)。この「たまへ」は四段活用已然形である。「る」は完了の助動詞「り」連体形。

  b 今はけしうおはせじ  会話文(話者=座主から)、尊敬の動詞(動作主=大君へ) 「けしう」は「おはせ」を修飾している形容詞(「けしく」のウ音便)

  c 人々のまもりきこゆるを  地の文(作者から)、謙譲補助動詞、動作の受け手=大君へ(動作主は人々)

 

問3 内容理解

  生徒の話し合いという体で、問題文の内容が物の怪を依りましに移している状況であることを説明している。文章Ⅰでは大君に物の怪が憑依してその正体を現す場面。文章Ⅱでは源氏の妻(紫の上)に憑依した物の怪が出現するのだと分かる。またリード文から、この物の怪は文章Ⅰではかつての左大臣の恋人である女君(の嫉妬の念)、文章Ⅱではかつての六条の御息所の霊だと分かる。

 ⅰ 「童に移された物の怪が…X…と言っている。」

  物の怪の言葉は、「同じくは【源氏に】思(おぼ)し知らせむと【私が】思(おも)ひつれど、さすがに命も堪ふまじく身をくだきて【源氏が】思(おぼ)し惑ふを【私が】たてまつれば、今こそかくいみじき身を受けたれ、いにしへの心の残りてこそかくまでも【私は】参り来たるなれば、ものの心苦しさを【私は】見過ぐ、つひに現れぬること。『さらに知ら』と【私は】思ひつるものを」である。

  訳してみると、「(憎い)源氏に思い知らせようとしたが、源氏が妻の死を堪えがたくお思いであるのを拝見すると、今でこそこんな物の怪になっても昔の(源氏を恋う)気持ちが残っていているからこそ、ここまで参上したのだから、源氏の苦しさを見過ごすことができずにとうとう正体が現われたことよ。決して(正体を)知られまいと思っていたのに」くらいの意味である。

  これで選択肢を見ると、④が適当である。③は、苦しんでいるのが妻になっている。②は源氏が自分に謝ろうとしているとあるが、そんなことは書いてない。①はまわりの者が自分を恐れて去ったとあるが、そうではなくて「みな去りね」と人払いをしたのである。

 

 ⅱ 「朝夕こがす胸のうち」や「いづれのかたにしばし晴るけむ」とありますよ。だから、これは…Y…と考えられます。」

  大君に女君の怨霊が憑りつい話しているのだから③④は除外。「晴るけむ」は「下二段活用動詞『晴るく』未然形+意志の助動詞『む』連体形」で、「どこにこの嫉妬の気持ちをはきだして気持ちを晴らそうか」ということだから、②が正解。

 

 ⅲ まず、大君の顔つきについてだが、「御かたちも変はりたるやうにて、その人とも見えたまはず」とある。「妬げなるまみのけしき、左の大臣は(かつて関係した女君の顔と)さやうにも分きたまはず。父殿ぞ、いとあやしう、『思ひかけぬ人(妹である女君の顔)にもたまへるかな』と心得ず思さるるに」

  物の怪に憑りつかれた娘の顔が、父大臣にはかつて娘婿と関係のあった妹の顔に見えた。(恐ろしや恐ろしや…)

  正解は④。

 

 二つの文章に共通する、古典に特有な事象を読み取ることができたか。

 登場人物の関係を、敬語の用法などから正しく把握できたか。

 以上の読み取りから、登場人物の心情を正しく理解できたか。

 助動詞についての理解も含まれ、なかなか良い問題だったと思われる。