第25回山形平和劇場

 7月31日(土)19:00開演 『ピアノソナタ「月光」による朗読・劇 月光の夏 2010』作、毛利恒之 演出、阿部秀而・古林嘉弘 山形市民会館 入場数350くらいか。昼の部を加えると1200とか。上演時間1時間40分くらい。毎年この時期、山形市主催で行われる事業である。最近は一般から募った人たちで作る朗読劇を上演している。今回は2004年の上演作品の再演。
 一般公募だからこれを配役するのは大変だろうが、演出部の絶妙な仕事が感じられた。
 舞台は半円形に切った壁というか、お椀形に空間が開いたパネルが立ててある。タッパいっぱいあるので巨大である。その奥の中割幕を下で結んで、これもパネルと同じく曲線的にしてある(うむ、表現が下手だ)。この形は何度かお目にかかったことがある。開いた空間にスモークが満ち、ライトの光条が見える。ホリゾントに様々な効果が投影され(夕焼けがすごい)実写映像が映される。米軍撮影の、神風の空母への突入シーンである。機は戦艦を狙わず、まっすぐに空母に向かっていく。この映像を見るといつも感じるのだが、命中するとほっとするというか感激するというか(不謹慎か)、敵艦を目前に撃墜されるのを見るのは苦しい。
 下手にグランドピアノ。ピアニストの方が生演奏する「月光」が涙を誘う。幅4間、3段に組まれた平台の上で、白と黒を基調にした衣装の人たちが入れ替わり朗読する。テンポは緩やかである。というか間がたっぷりある。気ぜわしい台詞のやりとりはない。朗読劇の特徴なのか。(朗読劇じゃなくてリーディングというのか)
 劇団山形、漢劇ウオーリア―ズなどから来ている人たちは台詞が言えるので、朗読でない部分(台本を手に持たない)で活躍している。舞台端にマイクが置いてあるので高齢の方の声も拾っている。
 上演後、来ていた本校部員2人と舞台を勝手に見せてもらいに行く。装置を担当した長身のTSさんは昔と変わらず若々しい。昔、学校の古い講堂で上演するときに照明機材を借りて、いろいろ教えてもらったのだ。よく分からずに、ポータブル照明卓の石?を飛ばした(焼いた?)なあ。思えばスタッフの方たちから(怒られたり、呆れられたりしながら)教えてもらったことが非常に多い。感謝。スモークはロスコーでなくてガスで送り出すやつで、消火器が添えてある。巨大なパネルは人形立てとボーダーに吊るのとで支えているようだ。照明と装置は指定管理者である綜合舞台サービスの人が担当しているので素人離れしている。びっしりと吊り込んである灯体の数がすごい。
 ロビーに特別攻撃隊(陸軍の振武隊)の写真が展示してある。出撃する者の一部も見送る女子学生も10代である。それを見ている生徒と同じ年代である。沖縄でも感じたことだが、この子たちにこんな経験はとてもじゃないがさせられない。でも当時はそうせざるを得なかったという事実が重い。
 演出部のIK先生に挨拶。こちらもお若い。受付をしていた、今は演劇部のない高校にいるIY先生と話す。この人とは、彼が生徒の時合同公演をしているが、いい役者だった(今もだけど)。彼の高校の少し後の世代が全国優勝している。その優勝メンバーの1人Sさんが今回映像操作担当で出ている。どちらも劇団山形所属。演出の阿部先生はだいぶお年を召されたが意気軒昂、芝居への情熱は変わらない。