劇団東演 朗読劇「月光の夏」 原作・脚本、毛利恒之 演出、鈴木完一郎・原田一樹
平成28年8月22日(月) 18:30開演 上演時間90分(途中休憩無し)
山形市民会館 大ホール
黒一色の舞台中央奥にグランドピアノ。前の上下に2個ずつ椅子代わりのボックス。
語り手は下手に男2人、上手に女2人。女性ピアニスト。いずれも黒い衣装。男2人は途中飛行帽を被る。舞台間口が広いせいか、少し間遠に立って朗読する。
実話に基づくと思われる特攻隊にまつわる逸話とその背景、真実を探求した作品で、映画化されてもいるからよく知られた話である。
基地からピアノのある学校までずいぶんの道のりを駆けてきて、一曲ずつ弾いて帰ったという。空母を攻撃するべく、戦闘機を避けて洋上低空を飛んでいくという特攻機の乗員。見送る国民学校教員。当時の若い男女の心情が切なく迫ってくる。
そして戦後の、生者と死者の葛藤。戦後65年、大震災を経て、私たちはその心の葛藤をあらためて感じた。当時の日本人と今の日本人に変わらぬ思いがある、あったのだということがしみじみと分かる。
この上演ではベートーベンのピアノソナタ14番「月光」が全曲演奏される。
朗読劇の特徴として、人物が入れ替わっても違和感がないという点がある。少ない人数でも多くの登場人物を演じることが出来る。ただ、読んでいるだけだと、観客は目をつぶってしまい、眠ってしまう恐れがあるので、若干の動き(演技)を加える。飛行帽のような小道具を使ったりもする。
人は、言葉(音色、音量、意味)の持つイメージ喚起力に敏感に反応する。
日頃高校演劇を観ているが、多くの場合、いかに無駄な台詞を言っているか分かるような気がする。