芝居一座「風」第30回定期公演

 「夜曲 ノクターン ~ 田山ツトムの優しい夜」 作、横内謙介 演出、廣野浩二(劇団北)
 平成30年4月28日(土) 18:00開演 山形市民会館大ホール 入場料当日1000円

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 この作品は過去何回か見ている。ハレー彗星の年が舞台背景になっているように、もう30年ほど前の脚本になる。(この彗星、自分は次の機会2061年には生きていないだろうから二度と見ることは無い)
 彗星の回帰と幼稚園の焼失に合わせてよみがえる過去の亡霊たちと、放火魔ツトムとの関わり。武者や忍者、お姫様、バカ殿様の登場する時代劇部分。玉野尾という悪霊?によって、女に変えられて生き返った黒百合は、愛する千代姫と再会できるのか。現代の部分と過去の部分がうまく重ならない感の残る脚本ではある。

 前に見た舞台では結構なアクションがあって、そこが印象に残っているが、今回はおとなしい立ち回りだった。スモークはずいぶん焚いて効果満点だが、役者さんたちの動きが躍動的でないので、脚本の要求する怪しい雰囲気が生まれていなかったように思う。
 各自台詞はよく言っているのだが、それらが絡み合って劇的空間を創出し観客に感情移入させるまでになっていないのは、もっと細かい演出が必要なのではないかと感じた。各役柄のキャラクターはよく考えてあるようだが、それらをまとめて作品にするという部分が演出なのだろう。多分、メンバーそろって稽古できる期間が十分に取れなかったのではないか。惜しいことだが、これはアマチュア演劇が等しく抱える壁であろう。自分でやってみて痛感しています。
 役者さんたちの動線が結構横一列なのだが、これは舞台美術の制約もあるのかもしれない。上下の公衆トイレや滑り台などの装置は具象的で出ずっぱりなのだが、存在を主張する割には生きていなかったと思う。市民会館の広い間口をいっぱいに使おうと思うと、逆に舞台を散漫にしてしまう危険もある。舞台美術は役者の動き、照明の当たり方を考慮すべきで、肝心の彗星の吊り物も、光の当て方を考えないと何だか分からないものになってしまう。

 30回の節目の回で、これまで継続してこられた努力には本当に敬服します。けれど、集客面では入場数200人くらい?で、1200席の大ホールには物足りなかった。
 山形演劇の歴史を作ってきたアマチュア劇団が、これから新たな観客層を開拓できるか? その具体的方策は?