プロセス和 第3回プロデュース公演

 「変! 羅生門」原案、高子 実 作、佐藤 杏
 平成27926日(土)1300~、1800~ 2回上演
 県生涯学習センター遊学館2階ホール  入場数、昼70、夜80ほど。
 
 30年以上前の高校演劇東北大会上演作品をもとにしている。が、それも芥川龍之介の原作と黒澤明の映画を踏まえて新たに創作したものだ。今回の作品が、前者の到達点を踏まえ、さらに新たな表現を成し得たのは評価できるだろう。

 客電が落ちると客席後方から僧侶の読経の声がする。といっても様々な仏の名を連ねて言っているのだ。それも終わり、やがて緞帳が上がると激しいロックの音楽と共におかしな格好の者たちが踊り狂う。4本の柱(紗幕にLEDのイルミネーションが数百個付けられている)が光る。ひとしきりしてこの者どもが去ると暗転して下人が佇むシーンとなってようやく「羅生門」らしくなる。

 原作は日大山形高校の演劇部顧問だった故高子実氏(「透明な壁の中で」が晩成書房で読める)の「噺・羅生門」で、東北大会出場作品である。36年前だが、覚えている方もいるかもしれない。男女の高校生によって演じられた舞台がどのようなものだったか、自分には分からないが、今回の若い男ばかりの舞台が、当時そのままには演じ得なかっただろう事は分かる。
 人間の、死んでもなくならない利己心、我欲。弱い者を踏みつけにする傲慢さを強く非難するテーマは重く深いが、それを馬鹿馬鹿しい演出にまぶして、観客の心の負担を軽減したかったのかも知れない。

 役者達が前回、前々回よりも上手くなっている。第1回は二人芝居。第2回は一人芝居だった。今回は10人を超える大きな芝居になったし、前2回が創作であったのに対し、原作を潤色したものとなった。前2作に登場した3人も今回出ているのだが、全く違う役柄を、芝居全体に溶け込むように演じた。
 今回初めて出た役者も、力があった。老婆役は成仏しないどころか殺しても死にそうにない、たくましい造形だった。この老婆から着物を引き剥ぐのは大変だったろう。最初から最後までパワフルに喚き、動き続けた。
 下人は、立ったまま内省的な台詞を言うのが良く似合っているが、最後には老婆と全力で格闘してみせた。
 死体の市女は白塗りで、ぴくりともしないで横たわっていたが、突然起き上がり、自分の抜かれた髪を惜しんだりする。夫が商っていた着物を死後も高値で売ろうとする執念が、女形のような動きの中で表現される。
 3人の死人(百姓)の掛け合いは絶妙で、これに老婆が絡むと実に可笑しかった。
 牢破り(これも死人)の酷薄さ、僧侶の静かな落ち着きも良く出ていた。

 昼夜2回とも観たが、昼はいろいろアクシデントがあり、まごまごした感があったが、夜は狙い通りの舞台となったようだった。夜の方がすんなりと入って行けた。

 部分的に関係したので、身内びいきの感想になりました。
 観劇してくださった方々、ありがとうございました。