二兎社公演

 「兄帰る」 作、演出 永井 愛
 平成25年9月25日(水) 18:30 開演  21:09 終演  途中休憩15分
 シベール・アリーナ  E12の席で観劇
 
 隣の席が山形演劇鑑賞会事務局長、後が劇団山形の方2人(1人はH野先生)だった。
 
 99年初演の作品の再演。時代設定は当時のままのようで、小道具の携帯がアンテナ付きだった。
 以下、ネタバレ。
 
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 緞帳開いている。舞台框まで部屋のセットなのだ。白を基調にした、洒落た吹き抜けの部屋。奥が3間幅で中庭に出入りできる2間4枚のガラス戸と半間のはめ込みガラス、壁。上・下は、舞台前面で6間幅に開いている。上手奥が台所(冷蔵庫がある設定)、上手前が風呂場に通じ、下手奥がトイレ、下手前が玄関に通じる。中程で2段下がっているが、上手側壁にドアフォン。デスクがあり、段差にまたがっている。デスクの手前に高い椅子が2脚。これはガス圧で上下する。前に白いソファセット、木のテーブル。上手にロッキングチェア。
 下手の壁に13段の階段があり、2階に上る。階段の下に電話台。セット上方は天窓になっていて、陽が差し込んだりする。階段の壁に絵が3枚ほど掛けてある。上手壁にも絵が1枚あって、みょうに明るいのは仕込みがあるから。
 
 場面毎に衣装替えがあり、それが楽しみでもある。
 
 後半笑いもあるが、全体的にはシリアスな現代劇。16年ぶりに弟夫婦の家に帰ってきた兄(鶴見辰吾)。ホームレスだったというが、ギャンブルの借金を返すため父の会社の金を横領した前歴がある。弟の嫁(草刈民代)を中心にその友人(お互いの子供がスポ少野球部員)、姉夫婦、叔父(父方)、叔母(母方)が絡み合って繰り広げる心理劇。兄は本当に改心して就職しようとしているのか、弟の実印を無断で悪用しようと狙っているのではないか。
 嫁はこのゴタゴタの中、フリーライターの仕事で編集部の意に沿って不正直なレポートを書くべきか、オーストラリアにホームステイ中の息子と友人の子が所属する野球部の合宿の手伝いに行くべきか否か悩む。本音、正論を通そうとする嫁と夫、親戚、友人との軋轢。一見、嫁の生き方に同調しているような兄。次第に孤立する嫁に近寄ってくる兄。この辺の心理的葛藤がうまく表現されていてぞくぞくする。
 ついに正体を現す兄。張り合う嫁。実印は銀行の金庫に預け、兄が密かに実印を捺していた3000万円の借金の連帯保証の書類を破る。隠していた印鑑証明のカードを取り戻して兄の企みを打ち砕くが、兄は豹変し、「力のないヤワな正論なんか何にもならない! なんだこの部屋は、人の物を寄せ集めただけで、自分のものなどない!」と迫る。
 騙し合いの中に微妙な恋愛感情のようなもの(憎悪と表裏一体)も生まれているようで、役者の魅力もあり、魅せられた。ラストシーン、中庭のミニ薔薇の鉢を持ち去る兄とそれを見ている嫁。いいなあ。
 
 作者が来館していて、終演後サインのサービスをしていた。客席にS藤先生も来ていた。