のんびりしている

 県大会(新庄市民文化会館)での『ささやき』に対する審査員講評文を掲載します。
 
 県大会事務局に送られてきた文章をそのまま掲載していますが、ごく一部に明らかな誤字脱字がありましたので、訂正してあります。
 
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  黒澤恵一 氏 (秋田県高校演劇部顧問)
 
 人の死を扱うということは、それ自体が悲しいことであり深いことであります。そのため、高校演劇で死を扱うことは大変勇気のいることだと思います。また、死をストレートに扱うと、通常、舞台全体が重いものになってしまいます。
 しかし、これは大変完成された台本だと思いました。ひとつひとつの言葉が心にジーンとしみてくるものがあります。台本が優れているばかりではなく、それを役者、スタッフの生徒がその登場人物の気持ちを受け取り、真摯に表現しているのが見て取れました。そのため、観劇後もずっと余韻が残っていました。
 役者たちはみな達者、キャラ立ちが研究されている、舞台装置がそのまま生活の一部を切り取ってきたかのように完成されている。すばらしいと思います。
 
 この舞台では中間部分、"事件"がこの舞台上では起きません。葬式に関するエピソードなどじっくり聞くと興味ある話題が多いのですが、動きが少なく、役者の演技で勝負しているため、役者には相当なエネルギーが必要だと感じました。
 (反論があるかもしれませんが、)お葬式が行われるこの場所には多くの人が混在しています。そのおもしろさを表現するのもありだと思いました。愛する者を失って悲しむ人々(上手にいる)と、お葬式を手伝っているご近所?の方々(下手にいる)この明・暗、陰・陽、を効果的に表現できたのではないでしょうか。
 
 2場で、夜のシーン、虫の声が本当に抜群の効果を醸し出していましたね。これを最大限に引き出すためには、大事な台詞にしっかりと間をとればいいと思います。
 たとえば、「私のお姉ちゃんになってたんだよね・・・」このリード(…)をもっと長い時間とってみてください。虫の声が印象深く心に染みわたります。
 
 所々の劇中劇をなにげに見ていましたが、途中からその劇中劇を演ずることが、その元部員たちの心情の変化が現れる繊細なシーンだと気付きました。その作り方をもっともっと丁寧にする必要があると思います。ただの再現に終わらないようにしなければなりません。
 また、劇中劇の脚本が2部構成で、前半にアコウヤ木に関する伝説、後半が地元地域の戦争の話となって絡んでいました。しかし、後半部分の主張が、時間的にかもしれませんが、短い時間のエピソードで終わってしまいました。作者のどうしても省きたくないという思いもあると思いますが、ここは思い切ってカットしてアコウヤ木の伝説ひとつに絞って掘り下げてもよかったと思います。それでも十分伝わります。
 
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  鈴木 茂 氏 (音響専門家)
 
 オープニングで枕経の声で緞帳が上がり電話が鳴ると云った件はとてもスムーズに巧く云っていた。舞台装置も通夜会場の控え室らしく立派で良かったが上手側障子、通路後ろ隠しパネルが少し寸足らずでパネル上からホリゾントが少し見切れていたのが残念だった。
照明は自然な感じで良かったのだが、昼と夜の変化が分かり難かった。夜のシーンでは上手側、下手側、其々、芝居で使っていないエリア空間を狭め必要な所だけ照明が当たるようにすれば舞台床のハレーションの目立ちも少なくて済んだのではないかと思いました。SE出前の声、消防団員達の声が録音した場所が悪かったのか残響が多くて聞き取り難く不自然だった。暗転のSE虫の声は無音状態を作らず早く出し次のシーンが夜と云う事を印象づける方が良い。劇中劇ではBGMだけでなく照明も少し変化をつけた方が良かったのではないか、ラストのBGMは曲は良かったが前半少し大きくてセリフの邪魔になった処が有った。
台本は面白く役者もそれぞれ良く演じて大変良かった。
 
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 講評の中で指摘していただいたいくつかの点については、県大会後修正しています。特に劇中劇でのみちこの心情表現、2つ目の劇中劇での松田の台詞や表現を考えました。パネルはかさ上げして黒い背景が見切れないようにしました。
 劇中劇の場面では照明を変化させていたのですが、明確に伝わらなかったようです。東北大会では夜の場面ということがより明瞭になるように、廊下に灯りを付け、障子に人の影が出るように工夫しました。
 地区大会でも指摘された、2つ目の劇中劇については、構成上、どうしてもカットするわけにはいきません。台詞を少し足した東北大会版なら、分かっていただけるかと思います。
 
 なお、もうお一方、村元督氏の講評文は後ほど掲載させていただきます。
 
 『ささやき』の脚本は、明日辺り、HPの脚本置き場にアップしたいと思っています。