上演第3日

 2校上演。幕間、降らせた雪の始末に緞帳を上げる。意外に時間がかかる。次の立て込みもパネルが多く、平台を囲んで立てるが、不思議なことに、リハではきちんと合った部分が5寸くらい合わない。そんなこんなで10分ほど押してしまった。
 13校全ての上演が60分59秒以内に上演終了。全出場校が大きな支障なく上演を終えることが出来て本当にほっとした。スタッフ、運営の先生方、生徒たちに感謝します。
 
 幕間30分を、撤去5分、照明換え5分、仕込み15分、1ベル~本ベルの5分と見込んでいたが、灯体や幕の吊り換えで時間を食った。会館の設備がもっと新しく、余裕があればこんなにかからなかったのかもしれない。6年後の大会はもう市民会館では無理かも知れない。
 
 昨日、うちの上演終演後、かわさきさんがフィアンセとN塚さんとともに舞台袖に来てくれる。悲願の東北大会出場おめでとうございますと大きな花束をプレゼントしてくれる。大輪の百合と青いバラ。慌ただしい中でろくにお礼も言えずに別れた。ほんとにありがとうございます。
 
 市民会館正面入り口
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 17日朝、小ホール前で発声する部員たち  雪が積もったが日射しがあるので外でもOK
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大会結果
 最優秀賞    青森中央高校 『もしイタ』
 優秀賞第1席  いわき総合高校 『Fainal Fantasy for XI Ⅲ MMXI』
 優秀賞      山形東高校 『ペスト』
 優秀賞      福岡高校 『田頭諒という男』
 創作脚本奨励賞 福岡高校演劇部 Featuring DJ Ryo
 
 うちは4校に入れず、優良賞でした。少し残念な気がします。生徒は本当によくやりました。
 
 
 【生徒講評委員会の講評文を掲載します。(福島県立磐城高等学校 1年 NNさん 担当)】
 
 火災の人命救助の際に命を落とした若い消防団員・俊一の葬儀に、高校時代に彼と共に活動していた演劇部の仲間が訪れ、当時情熱を傾けて作った、山形に古くから伝わる民話を題材にした「阿古耶姫」を思い出す。阿古耶姫と松の木の精霊は惹かれあい恋に落ちるが、村に頑丈な橋を架けるために松の木は切り倒され、松の木はその村へと運搬されていくが、峠を前にしてびくとも動かなくなってしまう。そこで阿古耶姫がそっと「ある言葉」を囁くと、するすると動いていったという。その話と、それを戦時に出征していく婚約者になぞらえる二部構成の芝居であった。
 「一軒家を買い上げた通夜会館」というセットに漂う生活感は、綺麗すぎない電話棚、あまり物がないキッチン、整理された食器棚などから絶妙に表れていて、とても分かりやすかった。それにより、死を悼む暇もあまりなく雑事に追われる女性たちの姿がとてもリアルに見えた。また、衣装の効果も大変大きかった。通夜では暗色を基調とした中でも各キャラクターの個性を表現し、火葬、葬儀と日を重ねるのにつれて服装がよりフォーマルになってゆき、俊一の母の和服姿は舞台に緊張感を与えていた。
 俊一演じる名取太郎の相手役はみちこで、その脚本はみちこを愛する俊一からのメッセージでもあった。二人だけが知っていた「ある言葉」は、「ごめんなさい」で、俊一の骨壺を抱くみちこの放った言葉と同じだった。「ごめんなさい」という言葉からは、自分をおいて命を擲つ彼が本当に自分を愛してくれていると信じ切れない、彼の生き方を理解して肯定してあげることができない、そんな心情が見えた。終盤で、俊一の母はみちこに俊一の親族として葬儀に参列することを提案する。仲間たちとの「阿古耶姫」の再現、俊一の妹との対話を経て思いは一方通行ではなかったと確信できるようになったみちこはその提案を受け入れたのだろう。
 消防団の活動中に亡くなった俊一への香典を、のぞみは「これがおにいちゃんの命の値段なのかよ」と投げ捨てた。良くも悪くもお金を大事にする中国出身の親族は、「お店で売っているものならなんでも買えるが、売っていないものは買えない」と命の価値について語る。俊一を巡って妹、同僚、後輩、親戚など様々な人物の心情が多彩に表現されていた。弔問客が火葬場に向かう際、俊一を乗せた霊柩車が動かなくなる。しかしそれはみちこが囁くまでもなく動き出した。そこで現実と芝居を重ねながらも、明らかな境界線を感じた。
 作品全体を通して、その人の命はその人だけのものではない、ということを考えさせられた。その人がいなくなった後には埋めようのない穴だけが残される。生きていくことは死んでいくことに、生き方は死に方にとても接近していて、死んでからも生の世界に大きく影響を与えるのだと思った。
 
 
 すばらしい講評です。高校生がきちんと理解してくれたことにうれしさを感じます。
 蛇足ながら補足すれば、松の木は山形市の千歳山にあり、阿古耶姫は福島県の信夫の里に住んでいて、橋を洪水で流されて困っているのは宮城県名取川の村です。お分かりでしょうか。