久しく記事を書いていませんが生存確認します。
暑くて、腰が痛くて、冷房を効かせて寝てばかりいる。
縦軸で回転する人間のシルエットが、右回転していると見えるか左回転していると見えるか、というクイズのような映像がある。シルエットは野球の投手だったり、バレリーナだったりする。最初は一方向に回っているとしか見えないが、何かの拍子に逆回転に見えるようになるので驚くというものだ。
動かない図像でも、「老婆と若い女」とか「鴨と兎」とか、同じ絵が違うものに見えるものがある。「錯視」である。
同じものを見ていながら全く逆の認識を持つという不思議さを感じるが、中にはどうしても一方向にしか見えない人もいる。
都知事選があったが、衆院補選15区の大騒ぎの後なので少しく関心を惹かれていた。
某候補者は、某市市長在任中のYouTube発信で一部界隈には知られていた。それは「若い革新的な市長」対「頑迷無知な老市議会議員」あるいは「偏向した地方新聞記者」という構図で編集されているので、初めて見る人はその論理展開や舌鋒の鋭さに感嘆し、悪を倒すスーパーヒーロー的な存在に見えて心酔してしまうのだった。
彼は市長の任期を終えずに辞職し、都知事選挙に打って出た。たいそうな金額の選挙資金を出してくれる人もいた。結果は2位だったが160万票も獲得し、知名度では現職に匹敵するような国会議員候補をも凌駕した。マスコミが初めから主要候補として取り上げたこともあり、社会現象とも言える状況になった。
しかし一方では、投開票日のインタビュ―で、「○○構文」と揶揄されるようなやりとりがあり、疑問符が付く場面もあった。
市長時代の議会質疑や議員との会話、単独インタビューなどの公開映像を見ると、まるで噛み合わない応答が頻出し、見ている方が困惑させられる。当事者はなおさらだったろう。
特定議員への個人攻撃とさえみられるような強い発言もあった。これらについては裁判が起こされ、市長側の敗訴という判決も下された。
自分に都合の良い他責的な思考傾向が指摘されたり、実効的な政策が無かったのではないかという批判が加えられたりしている。
一方で全国に発信された彼の言動に対して快哉を叫び、強く支持する人も多く、SNSによって個々の市議会議員や記者、印刷業者への誹謗中傷が殺到するような状況となった。
同じ人間の言動を見ても、多くの人々の中にまるで違う正反対の人間のような認識が広まる。「○○構文」についても、会話の前段から追えば正しいやりとりになっているとする人も多い。
まるで、初めに書いた「錯視」のようである。
川口市のクルド人騒動で、「日本人死ね」という声が映像に記録されたが、本人は「精神病院に行け」と言ったのだという。まるで違う内容であるが、同じ音声が聞きようによっては確かにそう聞えるから不思議である。客観的判断は本人に両方の言葉を言ってもらって、音声分析でもするほかないだろう。
ことほど左様に同じものを見、聞いても、認識が分かれるのだから、自分が正しいと信じ、相手が嘘を言っているとしか思えないのは当然であろう。
いかにして認識の異なる者どうしの共通理解が得られるか。
今に始まったことではないが、はなはだ悲観的なのである。