韓国駆逐艦からのレーダー照射について (1)

 ニュース、解説を並べてみた。韓国側の説明が、「照射したが故意ではない」から「照射していない」、「海洋警察艦のレーダー波を誤認したのだろう」、「救難活動を妨害する威嚇的低空飛行を謝罪せよ」と変転している。
 駆逐艦が探索レーダーを使用していたなら、かなり前から哨戒機の接近を探知できていたはず。無線で「我、韓国海軍、救難作業中」とだけ連絡すればよかったのではないか。
 それができない理由があったということなのだろうが。

ソウル聯合ニュース韓国海の艦艇が20日、東海上で漂流していた北朝鮮漁船を救助する際に火器管制レーダーを作動し、このレーダーが日本自衛隊海上哨戒機に照射されたことが22日、分かった。
 韓国軍の消息筋は「漂流中だった北の漁船が近くの船舶に救助信号を送り、わが軍が海軍駆逐艦広開土大王・3200トン)を派遣し、救助作業を行った」と述べた。また、「出動した駆逐艦は遭難した北の船舶を迅速に見つけるため火器管制レーダーを含むすべてのレーダーを稼働し、この際、近くの上空を飛行していた日本の海上哨戒機に照射された」と説明した。
 韓国軍は日本当局の抗議を受け、北朝鮮の漁船を救助する際に火器管制レーダーを作動させたと解明したようだ。岩屋毅防衛相は21日に記者会見を開き、「極めて危険な行為だ」として韓国側に抗議し、再発防止を求めたと明らかにした。
 救助された北朝鮮の漁船は1トン未満の木船で、4~5人が乗っていたようだ。数週間漂流し、船員のうち1~2人は死亡したという。
 韓国の政府消息筋は「救助された北の住民は病院で治療を受けた後、関係機関の調べを受ける予定」として、「彼らは北に戻ることを望んでいる」と述べた。


 韓国海駆逐艦火器管制レーダーで日本の海上自衛隊P1哨戒機を狙ったという防衛省の主張に対し、韓国軍当局は「通常の作戦活動中だった」と明らかにした。
 韓国国防部は21日、日本の防衛省の発表に関して「作戦活動中にレーダーを照射したが、日本の哨戒機を追跡する目的で照射した事実はない」と述べた。


 21日夜、岩屋毅防衛相は記者会見で、韓国海軍の駆逐艦20日午後3時ごろ、能登半島沖の海上海上自衛隊のP1哨戒機を射撃用の火器管制レーダーで照射したと指摘した。
 岩屋防衛相は「不測の事態を招きかねない危険な行為」だとし、「極めて遺憾。韓国側に再発防止を求める」と述べた。
 レーダー照射を受けて、その場で日本側が韓国側に意図を確認したが応答がなかったという。
 これについて国防部側は「我々は説明したが、今後日本側に誤解がないよう十分な説明をする」と述べた。


 夕刊フジ(電子版)は12月22日、「官邸激怒! 暴挙レーダー“攻撃”韓国を『敵国認定』必至 防衛省幹部「米軍なら即座に撃沈させてもおかしくない」の記事を掲載した。
 見出しの通り、防衛省幹部が匿名で「米軍なら『敵対行為』とみなし、即座に撃沈させてもおかしくない」とコメントしている。海自OBが言う。
 「決して荒唐無稽なコメントではないですが、まあ、米軍はそこまで乱暴ではないと思います。しかし、例えばウクライナ海軍がロシア海軍にレーダー照射を行ったら、ロシア海軍は反撃で即座にミサイルを発射しても全くおかしくないでしょう。日韓の国際的な大問題に発展しているのは、ある意味で当然です」
 もし、戦闘中にレーダー照射が行われたのなら、哨戒機は即座に「チャフ」や「フレア」などを撒くという。
 前者は日本語で「電波欺瞞紙」と訳される。アルミなど電波を反射する物体を飛散させることで、ミサイルのレーダー誘導を攪乱させるのだ。
 後者の「フレア」は、乱暴に言えば花火のようなものになる。ミサイルは赤外線センサーを使い、飛行機の熱源を感知して追尾する。そのため高温のフレアを機の周囲に展開させ、“囮”にしてミサイルを追わせるのだ。
 まさにレーダー照射は、実質的には戦闘だということがよく分かる。だが韓国側は、「自衛隊機を狙っていない」と弁明した。韓国紙ハンギョレ(日本語電子版)の「日本『韓国軍が自衛隊哨戒機に射撃統制用レーダー照射』抗議」(12月22日)から、韓国側の主張をまとめておく。
竹島から北東100キロメートルの公海上に、北朝鮮の船舶が漂流しているとの情報があり、韓国の海洋警察と共に、海軍駆逐艦も捜索作業に従事していた。
◆当時は波が高く、気象条件は悪かった。駆逐艦は全てのレーダーを総動員しており、この過程で、射撃統制レーダーについた探索レーダーが360度回転し、P-1哨戒機にレーダーを照射してしまった。日本が主張するように「直接、狙った」わけではない。

 ちなみに韓国統一省は22日、「20日北朝鮮船舶を発見、船員3人を救助し、1人を遺体で発見」と発表した。こうした韓国側の主張に対し、海自OBは眉間に皺を寄せながら、「うーん」と唸る。やはり充分な説得力はないという。
「軍艦は基本的に、4つのレーダーを搭載しています。まず普通の航海用レーダー。そして敵艦を発見する対水上レーダー、敵機を発見する対空レーダー、そして射撃に使うFCレーダー(火器管制レーダー)です。我々の常識では、FCレーダーは敵をピンポイントに狙うものです。広範囲の捜索に有用とは思えません。さらにFCレーダーを使用すること自体が、相当なリスクを負います」
 何しろ、誤射したら戦争一歩手前になってもおかしくないレーダーであることは、これまでに説明した通りだ。もともと訓練などを除き、運用には細心の注意が払われてきた。海自OBは顔をしかめながら言う。
「海自もFCレーダーを捜索に使うことがないとは言いません。ただ、他国の飛行機が近くにいる時は、絶対に使いません」