韓国駆逐艦からのレーダー照射について (3)

 12月25日に防衛省は声明を出し、(1)電波の周波数帯域や電波強度などを解析した結果、火器管制レーダー特有の電波を、一定時間継続して複数回照射されたことを確認した(2)海自機は駆逐艦から一定の高度と距離をとって飛行しており、駆逐艦の上空を低空で飛行した事実はない(3)3つの周波数を使って駆逐艦に呼びかけた、などと韓国側の主張に反論。岩屋毅防衛相は記者会見で、当日の天気が悪くなかったことや、駆逐艦と海自機の距離が遠くなかったことから「(電波が)微弱だったということはないのではないか」とも話し、韓国側が主張する「コリアコースト」という単語についても「そのような用語を用いた事実はない」とした(防衛省の発表では、「韓国海艦艇、艦番号971(KOREA SOUTH NAVAL SHIP, HULL NUMBER 971)」と、英語で3回呼びかけたとしている)。
 こうした中で、韓国メディアからも、韓国側の対応に落ち度があったとの見方が出ている。
  ソウル新聞のニュースサイト「ナウニュース」は25日に掲載した論評記事で、波が高い状況ではMW-08だけでは北朝鮮船の捜索が難しいが、STIR-180なら、さらに遠距離までビームを送ることができるため使用したのではないかと指摘。この行為は、海空域で偶発的な衝突を避けるための取り決めに抵触し、韓国側に落ち度がある、というわけだ。
 「精密調査のためにSTIR-180を稼動しようとした場合、レーダービーム放射方向の前方にある航空機が脅威を感じないように、事前にこれを日本側に通報すべきだった。特に能登半島上空は、日本はもちろん、同盟国である米軍、カナダ、ニュージーランドなど友好国の海上哨戒機が東海(日本海)の哨戒飛行に投入されるなど、頻繁に出入りする空域だ。日本本土に近い海域で射撃統制レーダーを照射しながらCUES(Code for Unplanned Encounters at Sea=海上での偶発的な衝突を回避するための行動基準)規定を遵守していないのは、広開土大王艦の明らかな失策だ」
 さらに、
 「日本防衛省関係者の主張通り、今回の事件は、韓国側がミスを認めて謝罪すれば、きちんと解決される問題であった」
などとして、韓国側の「威嚇飛行をしたのは、むしろ日本の海上哨戒機」といった反論が、さらに事態をこじれさせたことを指摘。
 「韓国が国際社会の責任ある一員であれば、ミスを認めて謝罪することも必要だ」

と、両国の感情のもつれを解きほぐす必要性を訴えている。
 岩屋防衛相は12月22日の記者会見で、火器管制レーダーの性質について
 「攻撃実施前に攻撃目標の精密な方位・距離を測定するために使用するものであり、広範囲の捜索に適するものではない」
 「仮に遭難船舶を捜索するためであっても、周囲に位置する船舶や航空機との関係において、非常に危険な行為」
と指摘している。仮に捜索のためにSTIR-180を使用したとしても、その妥当性については改めて検証が必要になりそうだ。J-CASTニュース編集部 工藤博司)
 

 自衛隊機へのレーダー照射事件で、韓国が説明を変える。「遭難漁船を救助中だった」との説明にも疑問符が付く。
●攻撃直前の行為
ーー韓国の駆逐艦が日本の哨戒機に対し「攻撃寸前の態勢」をとりました。
鈴置:防衛省の発表によると12月20日海上自衛隊の哨戒機P1が日本海の日本のEEZ(経済的排他水域)を飛行中に、韓国海軍の駆逐艦広開土大王クァンゲト・デワン)から火器管制レーダーの照射を受けました。
 弾の入った銃を他人に向けたのも同然で、平時にはあり得ない行動です。岩屋毅防衛相は12月21日「攻撃直前の行為だ。不測の事態を招きかねない。韓国は説明すべきだ」と語りました。共同通信の「レーダー照射『攻撃直前の行為』と防衛相」(12月21日)などが報じました。
●否認に転じた韓国
ーー韓国政府は事件を否認しています。
鈴置:初めは堂々と認めたうえ「大した話ではない」と言っていました。それが日本政府に追い詰められると説明を変え「レーダーを照射したことはない」と言い出したのです。
 12月22日までは韓国メディアに対し火器管制レーダーを使ったが、日本の哨戒機を狙ったものではなかったと説明していました。
 ところが12月22日に防衛省が「火器管制レーダーは捜索には使わない」と指摘。さらには日本のメディアが「レーダー照射は複数回で一定時間続いた」「火器管制レーダーは哨戒機を向いていた」などと意図的なレーダー使用の可能性が高いと報じた。
 そこで12月24日、国防部は「照射」自体がなかったと言い出したのです。「追跡レーダーの光学カメラで日本機を追跡したが、電波は一切出さなかった」との説明に変えたのです。