周辺地域の演劇状況について

 秋の雨。この頃は大分涼しくなってきた。草たちの繁茂する勢いも無くなった。雪囲いのことをぼんやりと考えたりする。その前に高い木の枝を切っておかないと落葉で大変なことになる。


 さて、演劇の話だが、地域の演劇を盛んにするという考えについてである。まず、この地域ー山形市周辺の「演劇人口」はどれくらいなのだろう。
 演劇人口とは、大まかに「劇団数とその団員数」に「観客数」を含めた人数だろう。
 全国演劇鑑賞団体連絡会議会ー東北演劇鑑賞団体連絡会議ー山形演劇鑑賞会という組織があって、年数回の例会を行っている。「文学座」、「俳優座」、「民芸」といった老舗から喜劇、ミュージカルまで幅広く鑑賞している。現在の会員数はサークル形式で350人程度であるが、自主的な演目選定、上演の手伝いなどを行っている。これが一番大きなまとまりだろう。ただし、会員の高齢化が進み、ある意味絶滅危惧種とも言える(失礼ごめんなさい)。
 あとは劇場主体での会員制度がある。「シベールアリーナ」とか「川西町フレンドリープラザ」とかで、会員特典があり、劇場独自の演目選定がある。前者は貴重な民間運営の劇場であり、後者は公民館である。「フレンドリープラザ」は小松出身の井上ひさしとつながりがあるので、「こまつ座」の芝居がかかる。中央で話題になった作品の上演時には近隣の県や東京からも見に来るようだ。これらの会員数はよく分からない。
 さて、アマチュア劇団とその周辺になるが、かつての「劇団北」は今は休止状態。「芝居一座風」、「劇団山形」「劇団楽天夢座」は歴史のある団体で、年一回の公演を、中央公民館で行っている。どこも新しい団員を入れるのはなかなか難しいようだ。
 戦後は地域での演劇活動が盛んで、各市町村の若者が競うように活動していた(ようだ)。新庄市米沢市にもその系譜につながる劇団がある。今は勤労者が多忙化しているのか、表現活動が多様化しているのか、興味関心の対象が広範囲になった(その実現性も高くなった)せいなのか、アマチュア演劇は衰退傾向にある(ようだ)。
 そんな中で、置賜では川西町での井上ひさしの演劇学校卒業生から、新たな劇団「菜の花座」ができたりしている。ここは主宰者が座付き作者でもあるという強みがある。山形市では若手の「のら」や「漢劇WARRIORS」など野心的なグループが登場し、10年が過ぎた。
 これらの劇団の活動には仕事や家庭との両立や稽古場所、活動資金の確保という難問が山積している。資金面では、県民芸術祭や山形市芸術祭参加団体・作品になれば会場費が免除されるので成立している(ようだ)。でなければ入場料だけで黒字にはならない(だろう)。
 そして各公演の観客動員数であるが、山形市主催の一般公募者による朗読劇「山形市平和劇場」(市民会館キャパ1200、2回上演、無料)で最大1000人である。「劇団山形」や「楽天夢座」でも(中央公民館キャパ600、2回上演)1000人には届かないのではないか。その入場料収入は@1000~2000円で、招待客も多いだろうから、おおよそ分かるだろう。
 芸術祭に参加しない場合は会場費の負担がかかる。参加するには、資格というのがあるかどうか知らないが、5年程度の実績は必要らしい。つまり、今結成して旗揚げで参加、というわけにはいかない。

 学校での演劇活動。山形大学には「舞台工房」、「めざましどけい」というサークルがあり、比較的活発に活動している。前者はサークル棟に稽古場を持っており、後者は主に遊学館などのホールで上演している。東北芸工大には「NO NAME」があり、一時衰退したが続いている。文教大や米沢の短大にもある。
 高校には、全県で20校ほどに演劇部がある。かつてからみると部数は激減した。特に庄内、置賜地区には各々3校しかなくなってしまった。高校は生徒数減少によって廃部という例が多い。地区大会を経た13校で県大会を行い、2校が東北大会に出場、東北大会から(つまり東北6県から)1校が、翌年夏の全国大会に出る。甲子園などとは比べものにならない低確率である。だがかつては天童高校や山形南高校が全国最優秀賞に輝いたのである。各校とも生徒会に部活動予算があり、会場施設使用料の半額免除ということもあり、中央公民館や遊学館での定期公演が毎年行われている。これも昔は県民会館キャパ1500満席という学校もあったが、今では400人を入れられる学校もわずかである。
 学校、学生演劇は活動拠点が一定しており、ある程度の予算も確保されているので運営、継続は楽である。また高校では顧問の経験・力に負う部分が大きい。毎年部員が入り、部の新陳代謝が行われるので、座組は短期間に変動するが、ある種の伝統は続いていく(ようだ)。卒業生がその後も地域の演劇に関わることは(進学・就職先が県外の場合もあり)あまり期待できない。
 これら学生演劇の観客層は、部員の友人家族が主であり、一般観客が入場するということは、一部の学校を除いて、少ない。従って、部員数の多寡によって観客数が決まってしまう(これは社会人劇団でも同じ事が言えるだろうが)。先日市民会館であったミュージカル公演は音楽関係の人が出演していたので、その方面ー音楽教室の生徒さんや関係者の観客が多く、満席だった。

 これらの観客層は相互に重複しているのか? 意外にその重なりは少ないかもしれない。それぞれが独立しているとすれば、それらの観客を何らかの方法で結びつけていけば、地域に潜在している大きな演劇観客層が浮かび上がるかもしれない(というのが、私の言わんとするところです)。
 総数は多く見積もって1500~2000人という感じでしょうか(いい加減適当です。山形市25万人の人口で1500~2000人てどうなんでしょう?)。
 もちろん各演劇団体の劇風・個性というものもあるので、一概に「演劇」で括るわけにもいかないのでしょうが、この人数を交流させ、活発化させる地域演劇活動とはどういうものか? さらにこの観客層を維持・継続、更新、開拓・拡大していく方法はあるのか? 
 誰か(じゃなくてみんな)真剣に考えた方が良いんじゃ無いでしょうか。もう考えている人もいるかもしれませんが。