演劇鑑賞会第359回例会

  『朝食まで居たら?』  作、ジーン・ストーン 、 レイ・クーニー  翻訳台本、たかしまちせ
                 演出、伊藤 大

 平成29年2月1日(水) 18:30開演  21:10終演(未確認、途中休憩有り) 
  山形市民会館大ホール

 キャストは3人。1970年のロンドンを舞台にしたストレートプレイ。
 主人公のやもめが住むアパートのセットが実にリアルに作られている。正面が入り口のドア。リビングで、下手が窓。上手がDKで、冷蔵庫やシンク、調理台がある。奥(寝室、バスルーム)に通じるドア。
 照明(部屋にあるスタンドなど)が細かに設定されている。翻訳劇らしく、日本とは違うイギリスの日常習慣が描写される(牛乳の注文とか)。

 ヒッピーと呼ばれる若者が登場するが、世界的に流行したのは自分の高校生の頃であって、懐かしい限りであった。この若者に、既成の生き方に固まったイギリス紳士?が振り回されつつ惹かれていくというような話。
 端的に言って、「マイ・フェア・レディ」のヒギンズ教授と花売り娘イライザの関係に近い。オードリー・ヘプバーン主演の映画は大好きで何度も見た。いい年の独身男が小生意気な娘にかまって、その成長を促そうとする。あれこれ力を注いでいる内に摩擦や衝突が起きるが、それを越えると互いに惹かれてしまっているというパターンは、まあ年取った寂しい男の願望が入っているのだろう。

 調理とか洗濯物干しとか、津嘉山正種の細かい演技が実に心憎いばかりである。転がり込んできた娘に対して、初めは父親のように接するが、次第にそれ以上の気持ちを持つようになる。
 一方の娘(というか出産するから若い母か)は、前半のヒッピーを造形するのに努力するあまり、また出産というイベントを誇張的に表現しようとして、やや一本調子になったかもしれない。後半の率直な女性心理の方がずっと良く表現出来ていたと思う。

 じっくりと人間の関係の深まりを見せていく芝居。いい感じでした。