今日思うこと

 8日、平成の玉音放送とも言えそうな今上陛下のお言葉があった。
 国民はあらためて、自分たちが「天皇のいらっしゃる国」の国民であることを意識したことだろう。
 世界に類のない長い歴史と豊かな文化を持つ王朝。島国であるという地理的な環境とともに、この悠久ともいうべき歴史と文化の継続性が日本人の精神を形成しているのだろう。
 皇帝を元首ではなく象徴として戴いているという、これまた世界に類を見ない国であるが、我々国民は、その存在を日常的には特に意識することもないように馴染んできたと思う。「鼓腹撃壌」と言うべきか。

 日本人は、隣国から文字、文化を輸入し、大切に守り育ててきた。そのことは、奈良の古寺を見る隣国からの観光客が、古代の自国を見る思いであるという話を聞けば分かるだろう。同様に、儒学や仏教にしても、その精神を固く保持しているのはもとの国の人より日本人の方ではないだろうか。
 この国の代々の指導者たちは、「虞芮畦を譲る」西伯昌のごとき静かな徳を尊重してきたのではないか。
 今こうして書いている最中にも、魚釣島近海で中国漁船が外国貨物船と衝突、沈没したとのニュースを知る。救助に当たったのは海上保安庁だ。300隻の漁船と10数隻の海警、海監、漁政が集中している海域で、中国公船はどうしたのか。海上保安庁はいったい何隻の巡視船を該海域に向けているのか。
 いやらしく領土を奪おうとして来ている彼らに対して、ことほどさように、お人好しとも馬鹿正直とも言える態度を取る日本人の心は、これまでの長い年月に渡って、彼らの(今となっては棄ててしまった)貴い先祖の思想を尊重することで培われたものなのだ。



 今読んでいる本。
 満洲国建国の正当性を弁護する』著者ジョージ・ブロンソン・リー、1935(昭和10)年刊。
 大日本帝国は、自衛のために日清、日露戦争を戦い、同盟関係から参戦した第一次大戦まで、その正当な戦勝国としての権利を欧米列強から干渉され奪われてきた。露清密約が明らかになった段階では、清国が南満洲を手放すことも当然だったはずなのにだ。
 アメリカの日本に対する政策が、当時までのアメリカ自身の(中南米やハワイに対する)行動原則に矛盾するものであること。ごく一部の国民党員による革命、「中華民国」建国が認められ、アメリカによるハワイ王国の併合が認められるのに、日本にだけは「満洲国」の建国独立を支援することが許されないこと(リットン調査団などのように民衆の自発的な革命しか認めないという立場)は、当時の日本人に欧米の悪意を確認させ、国際連盟を見限らせるのに十分だっただろう。
 (中共満洲を偽国家として抹殺している。満洲国の(部分的ではあるだろうが)成功という歴史は、彼らにとって認めがたいものなのだろう)
 日本も誤っただろうが、欧米諸国も誤った部分があり、それは当時の、軍閥に分割支配されていた中国(もはや地理的呼称に過ぎないかもしれない)の民主化、安定化を阻んだ。
 著者はその後の日中、日米大戦を予見し、中国が内戦から独裁者による統一支配を受けるまでをも見通し、その下で何百万人もの中国人が死ぬことを予言していた。アジア大陸の人々が命の危機を感じずに安んじて生きられるためには、中国が省ごとに分割されるほかないとも言っている。
 至極妥当な考えだったことが分かるが、当時の世界はそうは考えなかったのだ。