無事新春 かはりもなきはつはる

 新年明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。
 
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 元旦から大雪で雪かきをした。昼頃初詣に出たが、大手門前は上のような状況だった。寒気はさほど強くない。
 
 年末年始にレンタルビデオで観た映画。
 家族が借りてきたものも観たが、自分で借りたのは「人情紙風船」、「溺れる人」、「午後の遺言状」。それぞれ良さがあっておもしろい。
 まず戦前の時代劇。貧乏長屋の人々の生活。亡父の旧友を頼ることしか考えない生活力皆無の浪人とそれを風船貼りの内職で支える妻。非道い扱いをされた浪人は意趣返しもあって、髪結いで遊び人の新三(原作が髪結新三)が連れてきた大店の娘をだしに金をせしめるが、そんな夫に絶望した妻は夫を殺し無理心中をする…。救いがない感じだが、人情紙(風船)のごとし、か…。前進座総出演。モノクロ。比較的ローアングル。
 次、16㎜で撮影された作品。スタンダードサイズの画面が逆に新鮮に感じる。静かな音楽とともに、わずかな台詞と長い無言の時間。ほぼマンションの中だけでの撮影。妻は風呂で溺れ死んで生き返ったのか、夫が妻の死を妄想しただけなのか。両者の内心は次第に混乱を深めていく。終始安定したカメラ位置。
 自身に重なる老女優役杉村春子の演技はさすがだと思った。それに、撮影直後に亡くなった乙羽信子がまともにぶつかっている。杉村も、もう1人の元女優役朝霧鏡子も数年内に亡くなった。砂浜に膝を突いて合掌するシーンで思わずぐっと来てしまった。新藤兼人ならではのキャスティングか。微妙なパンとクローズアップ。
 
 他には「まほら駅前番外地」テレビ版がおもしろかった。短い方がテンポが速くていいのかもしれない。
 プロの脚本家はやはりプロだ。上手い。あたりまえだが。
 あとは「スーパーナチュラル」か。これ、シリーズも後になるほど展開がおかしくなってきている。
 
 さて明日は月曜日。出勤だ。
 
【追記】
 もう1本借りていた。林海象「夢見るように眠りたい」。ほぼモノクロ、台詞は字幕。全体が無声映画調で、弁士が語る。富豪の老女が私立探偵に依頼した件は、誘拐された娘の捜索。だが、犯人から与えられる謎を解いていく毎に、ある無声映画へと導かれる。そのフィルムプリントは最後の場面が切れている。それは、さらわれた娘を男が助けに来るという筋の時代劇だ。日本で初めて女優が出演したものだが、公開と同時に警察から中止を食らったため、ラストシーンは誰も見ていない。
 やがて、その映画の娘役が依頼主の老女であると判明。すべてはこのラストシーンを再現、完遂するため仕組まれたものだったのだ。探偵が主役となり、老女優月島桜を救い出す。
 この老女役を演じた人は深水藤子という戦前の女優である。映画監督山中貞夫と結婚するはずだったが、山中は「人情紙風船」を撮り終えてすぐに応召し、戦死してしまった。戦後はずっと映画に出なかった。彼女を復活させたのは、朝霧鏡子を再び起用した新藤と似ている(林の方が早い)。
 
 あと、マンガで「寄生獣」を読んだ。当時少しだけ読んだ記憶があるが、改めて通して読むと(田村玲子が死ぬ所までだが)非常にエキサイティングだった。はじめから少年誌連載でないからだろうか(絵が上手いからだろうか)、例の巨人の話より面白い。しかし、食物連鎖の頂点に位置する、あるいはそこから外れている「ヒト」の存在を、捕食される側の視点から見るという点では似ているだろう。そこにある深い問いは、人間は何のために生まれてくるのか? 何のために生きているのか? 何のためになら死ねるのか? だ。