第二回山形県青少年演劇合同発表会

 村山市・青少年演劇合同発表会実行委員会主催、NPO法人かがやき共催
 平成25年2月16日(土) 午後1時から 村山市民会館大ホール・小ホール 入場無料
 吹雪の一日だったが、コンスタントに60人程度が観劇していたと思う。
 
 1時直前に入場したが、開会行事が行われていた。参加劇団の代表が登壇していて自己紹介などが行われていた。
 
① 1時00分~1時53分 大ホール 楯岡高等学校演劇部 「ロボロボ」 作、西田シャトナー
 地がすり(グレー)が舞台一面に敷いてある。背景大黒幕(ローホリ隠しの板がなかった)。
 装置無し。地明かり(昼・夜)のみ。
 近未来、輸送機が不時着したのは絶海の孤島。積まれていた7体の家庭用ロボットが起動するが、輸送機の操縦士は行方不明。ロボットたちは新製品紹介のイベント用にプログラムされていて、まず、自分の性能などを説明し始める。しかし、アナライザーが状況に気づき、輸送機を修理して島を脱出しようと提案する。だが、ロボットたちの内蔵電池は10時間しかもたない。無理だという者、別行動する者。苦労の末、アナライザーを中心に、他のロボットから部品提供を受けたりしてついに修理が終わる。そして探していた補助燃料タンクが発見される。それは木の幹に取り込まれていた。実は不時着は10年前のことで、機の貨物庫が開いたのは腐食によるのだった。操縦士はもう亡くなっていたのだろう。ロボットたちは帰還できたとしてももう新製品ではないのだった。
 時々出てくる操縦士の場面。「鳥だ、花もある。ここはいい所だ」の言葉通り、人間である彼はこの島(自然の中)で生きることに喜びを見出したのだろう。この島ではロボットを使う必要もない(電気もないが)。反対にロボットたちは島を抜け出そうと悪戦苦闘する。ここには痛烈な逆説があるだろう。機械化、利便性追求の果てに生み出されたロボットが人間にもたらすものは本当に「幸福」なのか。
 この問題意識が直ちに観客に伝わらないのがもどかしい。個々の役者の演技力という問題とは別に、作品の「意味」を構成する演出力がまだまだ弱い。「場面の意味」を浮き上がらせるための工夫がもっともっとあるべきだ。そうすれば感動的幕切れが迎えられるのではないだろうか。
 衣装は各自の特徴を表していて良かったかと思う。話を分かりやすくするためにも装置の補助が必要だったかも知れない。舞台の広さとしては小ホールの方が集中できたのではないか。
 
② 2時30分~(3時) 小ホール 劇団のら「のら短編集」 作、原田和真 伊藤 穂
 3編の独立したコント。軽妙な味があり、洒落ている。タイミング、間がよい。中割を少し開けて引いただけの舞台だが、グレーの地がすりが敷いてある。衣装は全員黒一色。
 
 「奴隷」 作、原田和真
 奴隷にされた王子。助ける家来。王子と知らずにつきあっていた愛人。相手が奴隷になったと知るや他人になる愛人。実は王子だったと分かると豹変する。視点を逆転させるおもしろさである。
 
 「不幸の在庫」 作、伊藤 穂
 遠い未来から飛ばされて来た2人の男。何かを運んでは埋めるアルバイトに従事している。未来から連絡が来て10分後に未来に帰れることになる。が、1人は現代に残ると言う。戦争後の混乱にあるこの資源もない国になぜ残るのか。未来では何か地下資源が発見されたという。
 実は埋めているのは「こころ箱」で、人を暗い気持ちにさせる装置なのだと。流行したものの社会問題になって廃棄されるのだ。もうお分かりの通り、これが未来において資源と勘違いされる。10分後の未来からの連絡の声は、恐ろしく暗かった。
 
 「葬式」 作、原田和真
 葬式の後列に並ぶ4人の女性。故人の孫だという女。死んだじいさんの愛人だったと言う女。会社の上役の代理で来た女。そして本当の孫。この孫が故人と意思疎通が出来、愛人にメッセージを送ったりする。最後、孫だという女の勘違いが分かり、落ち。
 
③ 3時07分~3時48分 小ホール 漢劇WARRIORS 「よーい、どん!」 作、渡辺悠介
 ②と同じ舞台。1人の男(サラリーマン)が今から3億人の競争が始まると喧伝する。1人が勝者であとは皆おだぶつの生死を賭けた戦いだと。これを執拗に言うので、「精子」の戦いなのだと知れる。さえないおっさんと一緒に行こうとするが、そこにヤクザ風の男(闇金融)が現れ、2人を従えようとする。そこに自称イケメンの男が登場し、金ではなくて容貌が人生を決めるのだと言う。こうして4人が結んだり争ったり、体を張ったやりとりが延々と続く。さえないおっさんが平凡な人生を夢見、さんざんバカにされるが、終にはそれこそが正しいというような結論になり、譲られておっさんが1人でスタートする。その時、おっさんが豹変し3人を馬ー鹿!とののしって走り去る。が、袖でなにやら争いがあり、おっさんも脱落したようだ。3人、しらけた雰囲気の中で去り、幕。
 勢いのすごい演技。声も大きいし、漢劇というだけある男同士のぶつかりあい、卑猥さもある。かなり笑えた。衣装は、最後に4人ともランニングシャツ、茶色の短パンとなる。
 
④ 4時16分~5時04分 大ホール 東根工業高等学校演劇・放送部
   「あの空を見つめて」 作、東根工業高校演劇・放送部(生徒4人の創作)
 最初、ちょっとしたことからバスケ部でシカトされる少女。一転して応援団の男の子2人(夏なのに学ランを着ている)。団長は妹をいじめ自殺で亡くしているようだ。転校して来ようとしているバスケ部の少女、団長と話すうちに、妹に対して何も出来なかった、話を聞くことしかできない、転校しても解決しないと言われ、学校にもどって頑張る、というような話。応援団の1人のとぼけた味、通行人の連れている大きな白犬(犬の頭を被っている)などが面白いのだろう。
 ホリゾント使用。ローホリ隠しの板あり。町の遠見、上手に街灯(点灯する)、下手にベンチという高校演劇常套の舞台装置。
 トップサスを使う場面が多いが、立ち位置が合わず、顔が暗い時が多かった。
 展開、構成の弱さは楯岡さんと共通する(脚本の面ではプロと高校生とでは比較にならないが)。他の二劇団のように観客が芝居によって引っ張られるということがない。まあ役者の力の差も大きいが。
 いじめの問題をテーマにするときの取り上げ方。妹を亡くしているということだが、暗さ、深刻さがあまり感じられない。ことさら深刻ぶって描けということではないが、多くの部分が台詞で語られるだけで、エピソード化されていないのでドラマにならない。現役高校生がいじめをどのようにとらえているのか興味があったが、陳腐なとらえ方にとどまってしまったのではないか。
 
 この後、「劇団かんぱい」さんの芝居があったが、吹雪止まず、早めに車で帰った。
 第2回を迎え、若手劇団2団体が加わったのはよかった。複数の劇団が互いの芝居を観る機会は貴重だ。
 
 S野先生、O江先生、K藤先生、A食先生、H地先生にお会いする。K藤先生に先日の「やまのはのあお」のDVDをお渡しした。A食先生とはいろいろ話す。県大会の件で、夏に当たってくれた会場のことを聞くがどうもその後の担当者、事務局の連携が上手くできていなかったようだ。
 
追記  県大会会場は寒河江市民文化会館に決定したとのこと。10月10日(木)~13日(日)である。