平成27年11月8日(日) 14:00開演 15:35終演
新庄市民文化会館大ホール
「ユメノジゴク」 原作、夢野久作 脚本・演出、津島洋治、海藤芳正、信夫春香
夢野久作の短編小説による構成劇。詳しくは下を参照してください。
暗い。背景や舞台面が黒いということもあるが、ギャグを言っても陰鬱な感じがするのはなぜだろう。そもそも原作が暗いのだから当然なのではあるが。
間が長いというか、意識的に間を作ってそこに情念を詰め込もうとする感じもする。ある意味、歌舞伎の思い入れみたいな感じだ。
「瓶詰の地獄」という書簡体の小説を、生身の人間が舞台上で、ある程度写実的に演じるのは困難だったろう。
3本のビール瓶には別々の時期に書かれた手紙が入っていて、それを逆順に読んでいくようになっている。
手紙が、時間と共に漢語が増え大人の文章になっていくのも、教育を受けているわけでもないのに厳密に考えると変だが、この作品の主眼は楽園喪失というところにあって、アダムとイブが兄妹であったら、ということだからあまり気にしないで良いのだろう。
昔、これに似た設定の外国映画を見た記憶があるが、詳しくは覚えていない。
子供が成長し、衣服も合わなくなり破れ果てて裸で暮らす中、互いに性に目覚めていく過程で、聖書にある禁忌が二人のいるこの楽園を地獄に変えてしまう。
「笑う唖女」は今では差別語として使えない単語が頻出する。
山奥の村に唯一の医者が亡くなり、その息子が大学を出て医者となってもどってくる。やがて才媛との結婚式を挙げるというめでたい日に、唖の狂女が医院の前に現れる。女は臨月のようである。女は新郎の姿を見るや腰に抱きついて離れなくなる。
狂女を妊娠させたのはこの若い医者で、誰にも知られるはずがないのではあるが、その夜に狂女を毒殺しようとする。しかし、狂女を目の前にし、今まさに毒殺しようとするその時、背後に新婦の姿が…。新婦の目から涙が溢れ、男は進退窮まって自ら毒薬のカプセルをあおぐ。
ひたすら真面目な男は童貞のまま村にもどり、性の衝動に駆られて山中をさまようが、古い土蔵に閉じ込められた狂女の誘いに負けてしまったのだった。
この2作を1つに構成した意図は、純粋無垢なあるいは知的に洗練された人間(男)が、理性によって性的衝動を抑えられるかというところに共通点を見出したということなのだろうと思う(宮澤賢治と妹トシの関係に重ねる気味があるようにも感じる)。どちらも結局は負けるのだが、その悲劇を通して何が訴えられているのか。作者、あるいは劇団が何をどう考えるのか。物語るという行為を支える語り手の意志が、よくわからない。恐ろしいですねえという段階で終わっているとしたら、因縁話、怪談話的な受容の仕方になってしまうのも仕方ないかも知れない。2話の短編を包み込み昇華させる(救いと言っても良い)何かがある構成にできたらおもしろかったのかもしれない。でも、あくまで自分の受け取り方がおかしいのかも知れないから何とも言えない。