ヨーロッパに殺到するシリアやリビアからの難民の姿を見て思ったのは、70年前に日本人も満洲や朝鮮から引き揚げてきたということ。着の身着のまま大きな荷物を持って子供を連れ、途中で命を落とす人も多いのも似ている。軍に撃たれ、悪辣な人間に騙される人もいる。
ただ、自国から他国への脱出と、外国から故国への帰還であることとの違いはある。
思ったのは、今の難民を世界は受けいれ保護しようとしていることだ。
引き揚げの苦難の道を、世界のジャーナリストの誰が取材し、その実状を世界に知らせただろうか。ソ連、北朝鮮、中共など共産圏諸国に取り残された人々は鉄のカーテンの陰に隠されてしまったのだろう。一部収容所は宣伝のために公開されたが。
まあ、アジアの人間がいくら死のうが、当時の欧米人は関心を惹かれなかったのかもしれないが。
今、国外に避難している人々はまだいいのかもしれない。金を払って船に乗り、地中海を渡ることの出来ない人達も多いのだろう。いつ爆撃、砲撃にあうかもしれない恐怖。女性子供も兵士にならざるを得なかったり、暴行略奪の被害者になる恐怖と飢えの中でどうすることもできずにいる人々。
シリアなんかもう誰と誰が戦っているのかよく分からないくらいに混乱している。一時は反政府勢力がアサド政権を倒すかに見えたが、ロシアの後押しのせいか、まだ生き延びている。隣国トルコも、ISと戦ったり、ISと戦っているクルドを攻撃したり、なんだかよく分からない。国民も、そりゃ逃げ出せるものなら逃げ出したくなるであろう。
こうした失敗国家、崩壊した国家、亡国を立て直すのは容易なことではない。カンボジアは毛沢東主義に影響されたクメールルージュの支配下で知識人のほとんどを殺戮した。大人を子供に殺させた。今、その世代が断絶しているため、伝統文化の継承、国家再建のための人材も不足している。
ユダヤ人は世界に分散しながら、自分たちの言語、宗教、文化を維持し、シオニズム運動の結果、中東に自分たちの国家を「再建」した。それはすごいことだと思うが、彼らはその反動か、力ずくでアラブの国々の領土を侵食している。