いわき日記 その五

 23日の上演終了後、外に出るともう暗い。隣接した公園の木に青と白のイルミネーションが点いていてきれいである。居酒屋にでも入ろうと飲食店街を回るが、どういうわけか行くところ行くところ予約で一杯とか満員で入れない。駅前まで行ってやっとU民に席を取る。連れと2人で外で飲むというのも久しぶり。
 翌24日、朝4時半に目が覚める。朝風呂、二度寝などして朝食。10時にチェックアウトしてアリオスに向かうと和服に袴の女性が多く見られる。同様の男性も。大ホールで大学の卒業式が催されたらしかった。午前中に終わって帰るところだったのだろう。
 時間があるので近くの美術館に入る。現代美術の常設展のみ。なじみのない日本の画家の作品がある。いろんな試みが行われているんだなあと思う。エッシャーピカソマチスシャガールの版画。版画と言っても、リトグラフとかなんとかいうのだ。11時から文化会館?に入り、プラネタリウムを観る。金星の特集だった。プラネタリウムなんて仙台にいた頃以来だ。
 前日と同じ1階レストランで昼食。またbe先生に遭遇。12時半開場を待って入場。昨日と同じ席に座る。前日は4上演を観たが、「大当たり」という感じの一日だった。初日は観られなかったが、「待ちの風景」は福島の東北大会で観ているはずだ。男女2人だけの芝居で、淡々としていた印象がある。別の学校の上演を観てみたかった。「贋作マクベス」の例もあるし。観劇2日目も期待のうちに始まる。
 
 
 上演7 徳島県立富岡東高校羽ノ浦校 「避難」
     原案、川瀬太郎 作、村端賢志(顧問)
 
 教室を横に見た5間のセット。左右対称。上・下に2枚戸(引き戸)の出入り口。その内側に1間幅の窓の開いたパネル。上に高窓がある。中央に太い柱。戸は手掛けが埋め込んであり、鍵穴もあるようだ。壁、戸はグレー系の色。良くできた造りである。
上手に蓋の閉じたグランドピアノ。上手側に坐って弾く。下手に数脚の倚子が並んでいる。舞台手前は外に面した窓の設定。外を見る角度から、ここは2階らしい。後で触れる転換の都合からか、音楽室らしい掲示物も五線の入った黒板もなく、遮音性に乏しい古い普通教室にしか見えない。窓が大きく取ってあるのは、廊下での芝居を見せたいからである。窓には白い寒冷紗が張られており、照明によって紗幕のように切り替わる。窓前を暗くしての窓奥の照明は、前明かりが使えないので難しい。SSが強いと人物が互いに影を作ってしまう。背景黒幕。
 
 この脚本は来月発行の「季刊高校演劇№219」に掲載されるとのこと。以下は、もうあいまいな自分の記憶、印象によるのできっと間違っているだろう。感想というか、主に舞台使いのことになりました。
 
芝居は窓を通して見える廊下から始まる。避難訓練の後のようである。3人の生徒が見える。避難の確認に校内を回っていたという生徒会副会長の男子(ナカムラ)が教師に話している。教師は登場しないが、柱の陰にいる設定か。音楽室に誰かいた、戸の開く音を聞いたと言う。下級生の女子(ノグチ)はピアノの音を聞き、音楽室の戸をノックして、開いた戸の中を見たという。中にいたのは生徒会長のハセガワであったと。もう1人は無断で校外に出ていた女子(アベ)。
セガワは映画愛好会?でもある。三脚にカメラを付けて音楽室から全校生徒がグランドに避難する様子を撮影していたのだ。避難開始のタイミングはノグチに指示してあったようだ? 音楽室に一緒にいたイトウも映画作りの仲間。映画はイトウの現実(いじめられている)に即して撮影されている。持ち物を隠されたり、制服をベタベタにされたりするので、自分の持ち物はすべて音楽室前廊下のロッカーに入れている。アベがいじめている側である。
この「廊下のロッカー」はセット上でははじめから教室内にある。照明の転換で、窓のセットが裏(廊下側)から見た設定に変化する。セット奥が音楽室に変わるのだ。廊下奥の人物が手前に移動し、ロッカーを見て会話する。さらに手前のピアノとそこに坐っているイトウの部分は暗いという微妙な照らし方。ノグチがノックしてハセガワが戸を開けるシーンもこの設定で演じられる。ロッカーの中にナイフがあるのを見つけたアベは、イトウが自分に復讐するのではないかと恐れ、学校を逃げ出したのだと。前の2人と奥の3人が会話する場面はない。
こういったセットの使い方は斬新であるが、ストーリーが時間順を入れ替えて進むこともあり、場所と時間が入り組んでかえって分かりにくくなっている面もある。映画的な趣向であろう。
 
セガワは、もうあなたのことを映画にしたくないと言う。イトウは自分の映画ができなければ自分の存在したことが忘れられてしまうと言い、ピアノを弾き続ける。ハセガワはイトウのナイフで自分の手首を切り、イトウに示す。この傷が残るようにあなたのことはいつまでも忘れないと。
力まない演技であるが、やや淡泊な感もあった。
テンポがゆったりしていて、自分の体調(昨日の酒)のせいもあり、集中しきれない時があった(すみません)。
 
 つづく