2月2日の冬季公演にむけて稽古が始まっている。3週間でどれだけ出来るか。
『やまのはのあお』は、1時間、ほぼリアルタイムで芝居が進行する。楯岡高校さんが上演し、東北大会出場を決めた県大会の舞台を観ている。あのときはかなりゆっくりのテンポだったように記憶するが、うちはもっと速くなるような気がする。60分かからないかもしれない。
舞台美術は、山並みの遠見がかなり大きく作ってあり、駅舎はホームの一部だけ見えていた。しかし台本を読むと「無人駅の駅舎内」と指定があるので、今回は待合室のセットを組む。しかし時間がないので大変である。
12日、午前中は「土曜スクール」。自分も3年生の講習60分×3時間連続。もっぱら漢文なのだが、今年はずいぶんと問題演習をこなした。センター試験ではどうしても評論、小説、古文の後に解くので時間が足りなくなるから、短時間にできるだけ多くの文章を読む訓練だ。だが、稀に選択肢だけ読んで答えて結構な点数をとる輩も居たりして、この試験形式はいったい何なのかと思う時もある。
その後5時まで部活。装置の材料を買い出しに行き、少し作ってみる。
本番までインフルエンザと感染性胃腸炎に気をつけなければならない。
DVDで、黒澤明の『どですかでん』を観た。数ある黒澤作品の中でも一番にあげられるくらい好きな映画だ。四半世紀ぶりくらいだが、当時の印象が強くて、ほとんどの場面を鮮明に覚えていた。黒澤がカラーに挑戦した作品。バラックの住人たちのそれぞれの生き様から、人間という悲しい生き物への愛情が滲み出る。山本周五郎だしね。
しかし、あらためて観てみると、役者の演技が光っている。奈良岡朋子と芥川比呂志、伴淳三郎と丹下キヨ子と下川辰平、渡辺篤と藤原釜足のエピソードなどはすばらしい。いずれも狭い室内でのやりとりだが、互いの心理の微妙な変化が実によくわかる。特に伴淳のエピソードは本県出身の俳優ということもあって、前から感心していた。貧窮と身体障害というハンデを負いながらも善良な市民として生きている区役所の吏員。その妻は悪妻の典型としか見えないが、彼は自分とともに生きてくれている妻に深く感謝しているのだった。
役者の演技って、ああいうのをこそ演技と言うのじゃないか。
「この木、何の木かしら…。枯れてしまった木は、何の木でもないんだわ」という奈良岡さんの台詞が、今回は一番心に残った。前は乞食の親子とか電車バカ、松村達雄とかジェリー藤尾のエピソードの方が前面に見えていたように思う。
時代背景は戦後と高度経済成長の狭間のような感じだが、今観ても決して古く感じない。巨大なゴミ捨て場の住人たちと、時々垣間見られる都会の夜の景色は現代社会の巨大な格差を感じさせるかもしれない。