劇団めざましどけい Alarm54

 『エゴ・サーチ』 作、鴻上尚史 演出、菅原啓介
 平成24年7月7日(土)18:00開演 20:08終演
 6日(金)18:00~ 7日(土)13:00~ にも上演
 県生涯学習センター遊学館2階ホール(300席) 入場数50人くらい
 入場料500円(前売り400円)

 緞帳開いている。舞台下手半分に袖に続いて4段の階段状の台。間口は下が2間半ほど、最上段が2間ほど。だから、1段の高さ分位ずつ狭くなっていく(下手は袖幕に続いている)。ホリ全面見える。明るくしないときも大黒は引かない。ローホリのみ使う時があった。上手よりのホリゾントに、客席最前列のプロジェクターからオープニングのタイトル映像が投影される。
 他は黒いボックスで椅子、テーブルに見なす。
 台上と舞台面とを使い分け、台上は後半ではマンションの屋上として使われる。その場合、柵のセットが設置され、奥へ飛び下りる。
 
 照明は、このホールにはフロントがないため、客席にライトを置いて照らす場合があるが、今回も下手の1人を浮かび上がらせるために上手舞台下客席前にSSがある。その一画の客席はテープで囲って着席できないようにしてある。これは上手く当たっていた。
 現在と過去をカットバックで見せる場面では照明を切り替えるが、過去の部分はシーリングでなく1サス前の明かりが入っていたようだ。ボーダーを使ったのだろうか。この切り替えはかなり成功していたように思う。
 
 小道具は、携帯・PC・IPad・カメラ・野球グローブなど以外の食器などは無対象(食べる演技があるのだが)。装置が抽象的であるためもあるが、やや統一性に欠けた感じもある。
 
 役者の発声は大きくて良い。が、このホールでこの客数であれば大きすぎたとも言える。特に女性にだが、大きくするために甲高くなる傾向があったのではないか。すごい早口の人もいて感心したが、滑舌の問題か、少し聞き取りにくい感じもあった。男性は、堺雅人みたいな雰囲気の人もいて皆かっこよかった。しかし逆に言えば個性の差が出にくかったとも言えようか。
 演技は作品の要求するものに近かったのだろう。そういう意味では、もっともっと遊んでみせても良かった(客層にもよるのだろうが)。一方当然のことながら、深い演技、微妙な心理表現とか会話の機微とかいうものとは縁遠いものになる。極端に言えば、騒いでいるか独白しているか、で成り立っている。これは、最近観た他のアマチュア芝居全体に共通して感じることではある。

 場面は沖縄の離島と東京を行き来する。沖縄の妖精キジムナーが登場し、幽霊と人間の橋渡しをしたりする。
 全体的に、成井豊作品に通じるような雰囲気を感じた。
 タイトルは、ネット内で特定個人の情報がどの程度流れているか検索する行為。現在の最先端の話題に切り込むものであるが、その本質まで抉ったかどうか。
 「忘れられる権利」がニュースに上り、いじめ自殺事件が起きれば加害者の個人情報が暴かれてネットに流れ(人肉捜索か…)、関係者のブログが炎上する。こういう世界に生きていることの怖さが示される。
 そういう中で「消えたい」と思えば、逆に情報を操作して違う自分を作ってしまうことも可能だ。ところが、一方では別人が本人の名前でブログを作るということも可能だ。こうして同姓同名、経歴もほとんど同じ2人の人間が存在するかのような状況が出現する。
 あとは、ネット関連の様々な問題、恋愛(三角関係+同性愛?)、交通事故、記憶喪失、そして妖精と幽霊がまぜこぜで出来ている。
 
 2時間の作品を2日間に3回上演する意欲と努力、それに応じた観客動員への制作努力はすばらしいと思います。