劇団楽天夢座 第33回公演 大怪獣?大衆演劇

 「ゴジラ」 作、大橋泰彦 演出、楽天十郎
 4月14日(土)19:03開演 終演20:35
 山形市民会館小ホール 入場数100人(未確認、もっと多いか)
 招待券で入場(当日券700円、前売り500円)
 
 引き割り幕閉まっている。モスラ的音楽と共に客電落ち、開幕。背景、暗幕。舞台面も黒布、框も黒い紙?で覆っている。小ホール舞台は上手に出入り口があるのだが、舞台から下りてパネル(白い)陰に登退場する道も作ってある(避難する人たちの出入りなど)。ビルを思わせる白い格子が下手から5枚立ててある。上手にパネル。後方が全体に1尺ほど高くなっている。
 舞台上2本のバトンに、奥6本、前8本のライト。プロセ前バトンに8本。舞台面に転がし2本(赤と生)。客席後上方の調光室からも照らしていた。が、舞台中央当たりに明るさのむらがあるように感じた(顔が少し暗い感じ)。灯体数や向きの問題ではなくて、当てるべき所を点けていないのでは? ゴジラが火を吐くところでは装置が赤く染まる。
 怪獣映画の音楽を多数入れている。ザ・ピーナッツのモスラの歌もあった。ラストはやはりゴジラの叫びだったが、暗転後に入れたので違和感はなかった。
 衣装はよく作られていた。ただハヤタが動きにくそうだった。やよいはもう少し可憐でもいいような。祖母はなんだか妙だった(妙な役なのだろうが)。
 客席は段差のない床面に倚子を並べている。10列以上あったが、やや見えにくかったと思う。観客は家族親戚か、大人子ども含めて多い。隣は小学生だった。
 
 昨年6月に山東さんが上演した作品。お話はもうおなじみ。あまり目新しい演出はなかったが、自衛隊ジェット機が三角の紙飛行機だったのはおもしろかった。
 90分間、美女と怪獣の恋物語は観客を純情の深みに誘う、はずだ。でもこの芝居を見慣れた自分は、すれっからしの感想しか持てなかったかも知れない。ごめんなさい。
 
 演技は、会話する所でも相手の役者にではなく客席に向かって話すことが多いように感じた。巨大なゴジラに語りかけるときはゴジラが後方にいて、語りかける方は前を向いて話すという形を取るが、そのやり方が、人と人との会話部分でも同じように用いられている。そのために誰と誰が会話しているのか、その会話のやりとりで舞台上に何が生まれているのかがよく分からないときがあったようだ。さかんに舞台上を動きながら台詞を言ったりするが、何かパフォーマンス的なものに思えた。芝居の営みが、舞台上に何かが生起して観客がそれに感応するというようなものではなく、役者の、観客を相手としたショーになっている気味を感じる部分があった。まあそういうねらいの作りなのだろうが。
 じっくり向き合って会話するところも多く、そこは気持ちのやりとりが見えて良かったが、いくつかの個所で、そこには何か気持ちがあるだろうというところがすっと流れたり、微妙に相手の会話への反応という間がなかったりしたように感じた。こういう微妙な部分が結構全体の雰囲気作りに影響するので大切にしたい。
 役者さんたちの発声が、総じて細いというか、ややうわずっているというか、聞きやすいトーンよりやや高かったのではないか。訓練不足?のように感じられた。
 
 この作品もやはり時代の流れにはもう耐えられないのかも知れないと思った。ゴジラの映画が上映された同時代ならまだしも、今では内容も古いので観客も反応のしようがないのがつらかったのではないか。東宝大映の怪獣映画がなくなって久しい。少し設定を変えようとしても、ポケモンや平成仮面ライダーシリーズではこの作品の情緒は出せないだろうなあ。誰か斬新な演出で、この作品に新たな命を吹き込むような人はいないものか。