劇団ぬーぼー 第98回公演

 『贋作 罪と罰』 作、野田秀樹 演出、青木俊範
 平成23年9月25日(日) 12:30開場 13:00開演 15:58終演(途中10分休憩)
 米沢市市民文化会館ホール 入場料500円(中高生300円、小学生以下無料)
 入場数50名くらいか(未確認) 
                                         
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 緞帳が上がると一杯に組んであるセット。パンフにあるとおり、昨年の「芝居一座 風」による『贋作 罪と罰』のセットに似ている。3段になった最上部4尺ほどの高さに幅1間の部屋がある。障子が扉のように開閉して、老婆殺害シーンでは閉じた障子に血潮が散る設定だったようだが、あまり飛び散らなかった。用心のためか舞台前に敷いてあったものは暗転中に巻き取っていた。
 この部屋がいろいろに使われ、最後にはここで徳川慶喜の頭上に小判が流れ落ちる(よく見えなかったが)。裏にドアがあり、横はカーテンで通り抜けできる。障子は後で取り外した。
 中央前に尺高で幅2間ほどの、薄縁を敷いた部分は三条英の部屋その他。上・下の2尺ほどの高さに上った所も照明で区切って演技スペースになっている。階段は作りが弱くて、壊れないかと心配した。
 この高い台のけこみの汚しが、落書きといった感じ(ドラえもんの顔なども見える)で良くない。上の部屋の左右にも何かガラクタめいた物が置いてある。中央部屋下には白い壁面。そこに「御利用は計画的に」という字が書いてあって、これが最後まで見えているが何か意味があるのか? そして全体に赤い欄干や角々の飾りが付けてある。この色がきつ過ぎて、三条の赤い衣装が目立たなくなってしまったのが残念。不要な物が多かった。
 装置が芝居を決定する面があることを十分考えないといけない。このセットの各部分で芝居をするのだが、その度に照明を変えるので失敗も起きやすくなる。舞台全体を1つの大きな画面のように考え、マルチな小画面に区切ろうとするのは映像的な発想かも知れない。大事な演技が舞台の端で行われることになるので、演劇には不向きだと思う。
 衣装。時代劇なのだが、ジャージが基本になっているが統一感に欠ける。坂本龍馬ジーパン。それはいいとしても、三条の母と妹が、下はジャージ、上は和服(帯から下を端折っている?)というのが妙ちくりんだった。畳の部屋でも靴(運動靴)を脱がないのも違和感を与えた。
 音響。ああいう選曲は面白いし、タイミングや音量も適当だったと思う。
 照明。前記のように、細かい転換で慌てたところがあったし、暗くて顔が見えない所が目立った。ホリゾントがかえって前面の役者を目立たなくしていた所もあった。もっと見せたい物に集中する照明を考えた方が良いのではないか。
 客演もいる役者たち。悪くはないのだが、稽古不足かな。全体に、台詞の語尾が落ち着かない傾向があるようだった。三条や坂本は叫ぶと台詞が聞き取れなくなった。
 
 自分もこの作品を(部分的に)演出した経験があるので分かるのだが、人物関係の描写が浅いというか足りない。そのために登場人物の造形が弱く、観客も感情移入がしにくくなっている。三条と都、智と溜水のやりとりなどもっともっと心情を彫り込むことができるはずだ。
 2時間半の台詞を覚えるのが大変で、細かい演技が二の次になっている。練れていない。作者の意図するところにどれだけ近づいているのかいないのか。アマチュア劇団が大作をやろうとすると(時間的制約から)結局こうなってしまうのか。
 
 自分の関わっている高校演劇では、上演に対して審査員が評価を下すのが前提だ。上位大会へ進めるかどうかをかけて作品作りをする。生徒も顧問も技術習得のための研修会があるし、ビデオで優秀作品を観て研究する。日常の活動は即、良い作品を作るための競争なのだ。
 最近観たアマチュア演劇(素人芝居)の上演は、いずれも、ある意味道楽、仲間内の楽しみであって、客観的評価を度外視している感がある。失礼ながら、何か無惨なほどに緊張感が感じられない。自分はよほど高校演劇の方が面白いと感じる。