7月になった。

  8月が近づくと、テレビや新聞で戦中の特集が増える。このところ、NHKで沖縄戦の新映像、宮城県白石市学童疎開した浅草の国民学校生徒の話などを見る。空襲(都市への無差別爆撃)の悲劇は、いくら語っても語り尽くせないものがある。卒業式のために、3月7日に浅草に戻った6年生は9日深夜に大空襲に遭う。引率した教員の証言も伝えられる。19才で国民学校の先生になった女性は、よく理解し得ないままに、当時の教育機関の末端にあって、子ども達を疎開させる。疎開先でのホームシック、食糧難、不衛生。空襲による家族の全滅。子ども達にかける言葉もない。
 当時の師範学校女子部の卒業生は、すぐに訓導として国民学校に配置されたのだろう。戦時下、どんな気持ちで教壇に立ったのか。そして現場でどんなことを感じ、終戦後どんな思いを持ったのか。当時の人の思いを正確に再現することは難しい。我々の想像を超える部分もあるだろう。
 アンパン地雷を抱えて戦車に突入する訓練をしたという先輩教員(もうずいぶん前にご退職)に、本気だったんですか?と聞いたことがある。「今の人間には分からない。」という答えだった。戦後生まれの私たちには、分からないことだろう。まして今の高校生には到底分からないだろう。
 それを高校演劇にしようとするのは、ある意味、無謀であろう。だから、当時の再現はできない。登場人物は現在の高校生であり、彼らの、真実に迫ろうとする気持ちを中心にする他はない。
 8月の末に学校祭で上演し、9月の21日からの地区大会で本番となる。学校祭までに芝居が完成するかどうか、地区大会までには仕上げないと。毎日ノートを開いてあれこれ考えながらちょびちょび書いている。と言っても、まだ台詞にはならない。台詞以前の部分をしっかり考えておかないと、台詞は走り出さない。そこがまだ足りない。少しずつ方向が見えてきて、少しずつ溜まってきてはいるのだが、今書き始めてもすぐ尽きてしまう程度に過ぎない。
 とりあえず、月曜日の試験問題を作らなければ。