平成27年4月8日(水)18:30開演 20:05終演 山形市中央公民館
トム・プロジェクトプロデュース
「満月の人よ Mangetsu no hito yo」 作、東 憲司(劇団桟敷童子代表)
以下、ネタバレがありますのでこれからご覧になる方は読まないでください。
山中の古い家。全体に下手側を前に出して少し斜めに組んである。尺高、間口2間、奥行き1間半、すなわち6畳の和室(畳が敷いてある)。ちゃぶ台、茶箪笥、小箪笥、上に人形ケース。幅広い桟の障子の奥が廊下。下手が台所。木の丸椅子。竈(焚き口は上手向き)に羽釜、蛇口の下に石の流し台。棚には瓶だの缶だの柄杓だの。土間に木の台、上に砧を打つ杵のようなものがある(後で分かるがこれでモチノキの樹皮繊維から鳥もちを作るのである)。部屋の中程にむき出しの太い屈曲した梁がある。この梁の上に天狗が留まるのだという。上手側に天井の高さ(2㍍以上)の枠組み。ロフトのように寝たりできる広さがあり、部屋からはしごで昇降する。これは廊下の天井にもあり、家屋の背後(屋根を表す交差した材がある)から上ってくる。部屋前の土間から上手側に枠を潜ると外に出たことになる。舞台面には黒い地絣。動きやすく、客席から見やすい装置だと思う。
背景は黒紗幕。これに下からランダムに9本ほどの光条が映る。ホリゾントを使うのは、満月を下手上に投影するときだけ。
舞台上手側は山林を表現している。直立する、高さ3~4㍍の12~13本の柱に斜めに板が打ち付けてあるだけだが、網のような感じの物で葉を表現し、たくさんの紙垂(しで)が下がっている。
暗転の際、客席に向かってやや目つぶし的に青いライトを当てたりした。舞台面を青くする暗転はあるが、こういうやりかたもあるのか。
トーメンタルタワーからの照明もあったようだ。最初の客席からの登場シーンでは、第2フロントを使用していた。
酒やオコゼなどの消え物は本当に飲み食いしていたと思う。
独り暮らしの父の家に、尾羽うち枯らして帰ってきた息子。なんと彼が6歳の時から行方不明の母が、27年ぶりに戻ってきているではないか。
さらに天狗に会いたい、さらわれて消えたいという若い女が飛び込んでくる。
満月の夜の天狗祭りに向かって4人が繰り広げるあれこれ。
「天狗化け」で天狗の扮装をし、屋根の上で踊り、「天狗様、もう誰も連れて行かないでください」と懇願する老父。それを下から見ている妻、息子、女。
九州弁の台詞がハイスピードで繰り出される。始め少しとまどったが、方言の情緒に浸ることは台詞の心情の理解を助けることになり、作中世界にとけこんでゆけた。
夫婦の2人が愚かで正直な人間を演じて飾らず、とても良かった。