劇団めざましどけい ALARM58

 「わが闇」 作、ケラリーノ・サンドロビッチ  演出、小澤五月
 平成25年12月14日(土) 17:30開演 19:59終演 (3回公演の最終回を観劇)
 遊学館ホール  入場数60人くらいか(未確認、今年初の本格的降雪で客足は鈍かったろう)
 A目さんからの招待で観劇。
 
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 緞帳開いている。二間の和室のセット。下手の部屋は奥が10尺のパネルに4枚の障子で(つまり2間間口)、前にソファとテーブル。障子は開いて、奥がまた部屋になっている。上手の部屋も2間間口だが、奥が1間分は階段でセンターから5段上って踊り場から折り返し壁裏に消える。手前に細い柱が4本ある。上手の1間の壁には1枚引き戸。戸を開けると奥にはかがみがある。部屋には棚と囲炉裏(に見立てた枠)がある。
 二間は連続しているが、上手の部屋の階段がその分壁から前に出ている。床は平台のベタ置きだが、下手の部屋の方が前まであり、上手の部屋の方が少し引っ込んでいる。二間の間に3尺足らずの壁の切れ目があり、ここから下手奥に出入り(玄関、台所)する。(先ほど書いた下手障子裏の部屋のかがみのパネル裏を通っていく時と、障子の部屋を通っていく時があったが区別がよく分からなかった)この3尺分が上手に出て、裏口の設定になる。中割までは横壁があるので、前に下りて1袖前から登退場する。中央奥には9尺のパネルがある。ホリゾントはこれらの上の方しか見えないが、時間表現に使われる。
 壁も戸も階段も白くて、古い日本家屋には見えないが、これはプロジェクターから投影するスクリーンに利用するためか…。パネルが高い所為もあるが、壁に当たるサスライトのムラが目立つのは致し方ないか。プロローグで階段を下手大臣柱の所から当てていた。舞台最前にフットライトが置かれていた。
 
 開演から23分後にタイトルが投影される。それまでは10年以上前の柏木家の様子が回想として演じられ、プロジェクション・マッピングがしばしば用いられる。舞台が映画の画面のように塗りつぶされるとか、セットが歪むとか(これは今ひとつだったか)、今引き戸から役者が退場した場面が、同じ場所に映像で繰り返されるという斬新な演出に喫驚。
 
 
 脚本の特徴としては、ある出来事が直接描かれず、その後の場面から始まり、何が起こったかを説き起こしていくという進め方が目立つ。
 長いプロローグで小説家柏木伸彦の家族史が説明される。だが分かりにくい。祖母の死後移り住んだ古い家。3人の娘をもうけた妻は小さな事に苛立ち、それに耐えられない伸彦は別居する。やがて離婚を口にするが、妻は自殺。再婚した女性からも逃げられる。書生として住み込む三好未完という人物。
 
 一挙に時間は現在へ。長女が小説家として名を成している。次女は、古本屋から郵便配達になった男の妻。三女は東京で女優になっている。家では老いた父がドキュメンタリー映画の取材を長期にわたって受けている。…多くの人々の行状、思惑が絡み合い、説明しがたい。
 長女の失明、次女の離婚、三女のスキャンダル、そして父親の死。取材したビデオテープは紛失…。
 救いがたいラストに思われるが、父が最期に笑ってみていたアルバムの写真が救いになる。
 ラストはビデオテープの喪失に怒り、絶望する瀧本の姿が印象的。あれで最後の笑いが気持ちよく感じられたと思う。
 
 女優陣に劣らず、男優陣が力を発揮。三好、寅夫(次女の夫)、瀧本(ドキュメンタリー作家)、大鍋(その助手)などみんな良かった。2時間半の混みいった大作を最後まで引きつけたのは立派。