演劇集団舞台工房 35th Stage 2012新入生歓迎公演

 「雨と猫といくつかの嘘」 作、吉田小夏 演出、北田威人
 4月14日(土)13:00開演 14:38終演
 (12日から14日夜の回まで4回上演)
 山形大学小白川キャンパス テニスコート脇サークル棟2階共同練習室
 入場数20人くらい?(未確認) 招待券で入場。
 
 暗幕の背景、黒い床に框で縁取った6畳間(横長)。中央奥に黒いドア。ドア枠と縁だけの素通しのドア。これはドア裏の人を見せなければならないから。ドアとその壁のラインに、雨を象徴するテグスが張ってある。ドアにも張ってあるが、均等幅ではなくしてある。6畳間の上・下の空間前にも張ってある。
 2本のボーダーライト(2色)が平行に吊ってあり、6畳間とドアを照らしている。客席上のバトン1本に6~8台のスポットが吊ってあり、舞台全体を照らす(ラストシーンなど)。暗転はほんとに怖いくらい真っ暗になる。
 ほぼ全編にわたって雨が降っている(音響)。幕開きには時計(時間がこの芝居のテーマに関わることを暗示する)の音がかぶさっている。
 この会場はプレハブのような作りなので、外の音が聞こえる。グランドの運動部の声、楽器を練習する音などが音響効果のように聞こえてしまう(さすがにラッパの音は途中で止めてもらっていたようだ)。
 「生まれ変わりの物語」である。世代の交代(というか繰り返し)と想いの重なり。風太郎という男の、6才から60才までの誕生日を繰り返してみせるが、役者が同じ衣装で2役演じているので見た目だけでは変化が分からない。台詞を言ってはじめて分かる。風太郎も初め老人なのだが(まあ60才はそれほど老人とは思えないが。自分の感じとして…)6才の時と同じ姿である。6畳間に小さな卓袱台。カップラーメンやおかき、誕生祝いのケーキなどが繰り返し出て来るが、時間と共に人も物も微妙にずれていく。
 猫の話がこの芝居の背骨になっている。猫は、思い残すことがないときは人に抱かれて死ぬ。想いが残って、また生まれ変わりたいときは人に見られずに死んでいくのだ、と。
 風太郎の飼い猫タマは雨の日に外へ出て、人に看取られずに死ぬ。しかし人間(風太郎の息子鉄平)に生まれ変わり、愛していた風太郎の妻(つまり鉄平の母親だが、の生まれ変わりの女性=実は男性、というのは少しお遊びか?)に再会し同棲する。
 風太郎の母は、夫が「男の甲斐性」と言う浮気に悩まされていたが若死にしたようだ。その死んだ母親が、60才の風太郎の誕生祝いに訪ねてくる…のが冒頭。
 母親は風太郎に、「泣いたらダメ、泣いたら負け。人は生涯3度しか泣かない。生まれるとき、大切な人が亡くなったとき、本当に願うことがかなったとき。」と言う。風太郎の父は、「生まれるときは自分で泣き、死ぬときは誰か代わりに泣いてくれる人が1人でもいれば上出来。」と言う。
 人生の本質を、世代の交代(繰り返し)と想いの重なりととらえた作品。最後までしんみりと静かな雰囲気で、しかし90分を飽きさせずに見せた。…もしかしたらもっと笑いがあってよい作品なのかも知れないが、観客はずいぶんまじめに観ていた、というか演出も役者もまじめだった。
 
 うちの定期公演のチラシを折り込みさせていただき、ありがとうございました。