置賜地区春季合同発表会 いま幕があく (22日)

 平成27年3月22日(日) 川西町フレンドリープラザ

 会津の2校の招待上演。今年度福島県大会3・4位の作品とあって、昨日の地区4校の上演とは別物のレベルだった。素晴らしい刺激になった。福島県の層は実に厚いと痛感する。両校とも個々の役者の質はとても高いと感じた。
 聞けば、会津地区では毎年2月に20分劇の合同発表会を行い、仕込み・リハからダメ出しを受けるのだそうだ。

 13:20 開会式 地区事務局長(A藤先生)挨拶 館長挨拶

 13:30~14:34 福島県立大沼高校 「Paradise (パラダイス)」 ――キスをしてさようなら
   作、佐藤雅通 演出、板橋佳音

 背景大黒幕。中割で間口5間くらいに狭めてある。平台がL字型(上手側に出ている)にベタ置きしてある。下手奥と上手袖際に、枠だけの出入り口が立ててある。上手側の平台には赤いソファ。平台前には11脚の、すべて違う種類の椅子。折り畳みテーブル。これで主人公弥生の家庭とフリースクール「パラダイス」を表現する。
 照明は、始め狭い感じだったが、後に間口一杯の地明かりと、客席前上・下からのスポット
 転換は、人物がストップから入れ替わり、椅子に座ると居ない約束、などを多用している。周囲を客席に囲まれた小劇場的環境では有効だろう。
 大震災の朝、弥生の家庭。久しぶりに部屋から出て来た引きこもりの弟。祖父両親兄弟に対して不機嫌な弥生。そして彼女だけが生き残った。家族の最後の記憶に残ったのは不機嫌な表情だった。
そのことを悔いる弥生。目の前の人が少し後にはいなくなり二度と逢えないと分かっていたら…。
 3年後、短大を卒業した弥生はボランティア活動や福祉施設に勤めたりしている。
 ある日、彼女が勤めているフリースクールに、由紀が飛び込んでくる。由紀は弥生に励まされて高校を受験し、合格したのだった。しかし弥生はすでにいなかった。
 弥生は後悔を抱えながら、亡き弟の手に握られていた自宅の鍵を首にかけている。その鍵を由紀に譲ると書き置きして引っ越していった。…彼女にどんな変化があったのか。
 彼女を迎えたパラダイスの人々は、弥生についての情報を、劇中劇として伝える。その中から浮かび出る弥生の姿は…。
 普通の女子高生が悲劇を経験して他人(弱者たち)を立ち直らせるほどの人格を得るまでの過程は描かれない。
 最後に、あの朝、弟が引きこもりから出、家族が明るく話し合った記憶を取り戻すことで、家の鍵を手放すことができた。後悔は氷解し、熱い涙となるが、しかし、今いる場所がパラダイスになっても、彼女はそこを離れ、新しい場所に行かなければならない。だから由紀に鍵を託して引っ越す。あえて自らに厳しい生き方を強いるということか。

 以下、自分の正直な感想になります。失礼はご勘弁ください。
 大震災について、実地の取材を重ねられたことを承知の上で、その努力に敬意を表しつつも、あえて言ってしまえば、話の柱として、家族を一度に失う悲劇は確かに重いが、それは必ずしもあの未曾有の大震災を反映しているか。もちろんそれはこの作品にだけ言えることではなく、すべての大震災を取り上げる作品に対しての思いであり、じゃあどうすればいいんだというのは自分には答えられないのですが。「もしイタ」や「FF」、「好きにならずにはいられない」を越える作品は現れるのか。非被災県民のせいなのか、隔靴掻痒?の思いが拭いきれない。
 演技・演出は「シュレーディンガーの猫」と同じであるように感じた。だから、同じような感想になってしまいました。
 


 15:00~16:03 会津若松ザベリオ学園高校 「パシレメロス」 私、絶対認めません。認めたくないんです。
   作、松本有子 演出、板橋朋希

 役者達が圧倒的に魅力的だった。演技・台詞の間が良く考えられている。引き込まれた。が後半の展開が支離滅裂(な作品の強引な解釈という設定)であっけにとられた。
 ホリゾントを使うが、黒紗幕が吊ってある。これは途中で昇降する。椅子が6脚。後に白板。下手にノートPCの置いてある長机と椅子2脚。東北大会全上演終了直後の生徒講評委員会という設定。
 巨大なメロンパンの吊り物が出てくる。照明は基本的に大沼高校さんと変わらない。
 各県から1人ずつ、つまり各県大会3位に甘んじた部の代表が、審査への批判と他校上演の批評をするというお話。あれ、全国大会にもこんなのあったな。
 名前が各県名になっていて、山形さんは山形県人から見ると少し残念な造形(分かりやすい劇しか分からない山形さん)だった。他県からはああいうふうに見られているのかなあ。
 どこかで観たような題名の劇への批評がいくつか続く。たとえば「ハゲドンの放課後」はナマハゲが出てくるという調子。
 委員長の青森さんは、県大会で生徒創作に敗れ悔しがっている。彼女が伝える女性審査員の、生徒創作であるというだけでべた褒めし、自分の評言に酔っているような話しぶりは、自分も経験がある(ような気がする)ので非常に納得して聞いていた。そんな青森さんは顧問の創作を何ヶ月も研究して舞台を作りあげた。それが1週間で書き上げたちゃらい生徒創作に負けるなんて
 最優秀校は、審査員目線でいけばほぼ意見は一致して2校に絞られる。が、ここは生徒目線で選んでみようというので挙げられた作品が「パシレメロス」だ。
 男性陣(宮城君と岩手君)は荒唐無稽、テーマ無し、メッセージ無しの作品「パシレメロス」を推す。そうして劇中劇「パシレメロス」が始まるが、これが実にわけが分からない。メロス(岩手君)は王のパシリになってメロンパンを買いに購買部へ、しかし売り切れで10㎞先の町の市場へ10秒で買いに行かなければならない。夜通し走って着いた市場でも売り切れだった。だがメロスはなんと偶然にも、10秒フープ(だったか?)を通っていた! そうこうしているうちにレイア姫(福島さん)からメロンパンをもらうために?オランウータン星に行ってしまう。途中にインド映画的ダンスが入る。
 それがおもしろいという高校生達、納得できない青森さん。最後に、走り続けるメロス。並んで走る講評委員たち。走れない青森さん。無言で足音だけの時間が過ぎる。そうして、青森さんも…。
 おもしろい。役者の動きがとてもいい。けど結局どっちなの? 青森さんは勝ちを譲るという言葉に納得したのか?
 大沼高校の部員達がその他の人々として登場していた。

 両校とも、実に刺激的な上演でした。この時期にあのレベルを維持していることに驚きます。ありがとうございました。


 この後、菜の花座のコントがあったが、失礼して帰った。

 この春季合同発表会は、米沢市内の高校だけで行っていたものだが、今年会場の米沢市民会館が工事中のため、フレンドリープラザの企画にのったということらしい。そのため、置農と高畠が参加したのは初めてらしい。