金曜日の夜秋田に到着。2泊して東北大会を観る。一日目。さすがに一日6上演を観るのは疲れる。
大会運営は、ややおしたが順調。場内アナウンスも放送部のようにカキッとしていていい感じだ。
役者の顔をよく見ようと7列目に座って観た。以下、勝手な個人的感想です。失礼なことがありましたらご勘弁ください。
作、斎藤泰弘 潤色、安積高校演劇部
教室かと思いきや(教卓と教室の机がある)、PKO女性部隊(3人)の部屋。紛争地域での輸送を担う任務。戦争は終わっているが輸送部隊は事故で全滅、なんとピンク色のリヤカーで物資を運ぶことに。
リヤカーにはスポンサーのロゴが貼ってあり、報道に写させる。PKOも資本主義である。
物資を狙うゲリラ2人との駆け引き。最後に、ある種の精神安定剤を仕込んだかっぱえびせんが平和のための秘密兵器であることが分かる。しかしゲリラの手に渡る前に爆破される。資本主義は戦争であり、戦争はやめられない止まらない、のである。
始め中割幕が閉めてある。幕に2サスが当たる。現地になると中割幕が開き、吊り物のツタ?、樹木?のドロップ。舞台に草の遠見。ホリは緑色。銃撃、爆発の時は赤色になる。
しょうもないPKO女性部隊とゲリラがくりひろげるドタバタ劇。観念的でノリの芝居と思う。
最後の場面で照明が暗く見えずらかった。
上演2 青森県立尾上総合高校 「愛情協奏曲(コンチェルト)」
作、後藤優生 脚色、尾上総合高校演劇部
ホリやや狭めてある。舞台中央奥に背のないベンチ。上手に街灯(裸電球が点灯する)。公園か。
ベンチ前の照明が、プロセサスからの3本のトップで作っているのでその間が暗かった。SSは使っているが。地震の場面ではストロボを使用。吊り物で万国旗が降りてくるのが壮観。
台詞が一言もないという斬新な芝居。すべてマイムである。そのため細切れの場面になり暗転が多かった。音楽が全編を覆っている。
2人のピエロ(対照的)とヒロインの少女。不良の男2人が織り成す人情悲喜劇。マイムやパフォーマンスはよく練習してある。少女のトランペットは、最後に吹くだろうと思っていたがやはり吹いた。「上を向いて歩こう」だった。
喧嘩すると地震が起きる。仲良くすると平和な音楽が鳴る。愛と平和のメッセージ。
秋田に転住している福島の高校生華子の思いと、華子に共感する健を中心とした話。華子は福島に帰りたいが父親が許さない。健はボランティアで福島に行きたいが、親からテント生活のテストを課される。
かすりきずとは華子の友達がひざを擦りむいたことによるが、華子の心の「毎日すり傷」を受けるような状態を言っている。
素舞台。椅子、テーブルになる角材を立方体に組んだもの、星球(7個、ちょっと足りない)、ドーム型テントが出てくる以外は何もない。音響効果も虫の声が1回くらいで後はほとんどない。暗転も唐突な感じで暗くなり無音である。
演技は素直で真面目でいいのだが、台詞が心情をストレートに語っていて含みがほとんどない。物言いも淡白で、動きも少ないのでドラマ化していかない感じ。静かで起伏に乏しく、幕切れもいささか唐突か。
上演4 岩手県立北上翔南高校 「Break Through」 作、外山 曜 潤色、北上翔南高校演劇部
8尺高、4間半のパネル、入り口の引き戸が2枚ある。ガラス部分はアクリルでなく柔らかい感じ。戸のはめ方が左右逆(右側が手前になるはず)。開けたときの鏡は布のようだった。下手に折れて2間のパネル。サッシ窓がはめてあり、開閉する。奥が廊下の設定で、さらに窓が見える。部屋の中、上手にスチールロッカー。人が入る。
家庭科教室。家庭クラブ員の男子2名、江藤と藤岡がいる。そこに家庭科教師安田と彼女のクラスの生徒で停学常連の真田が入ってきて、退学の瀬戸際である状況が語られる。男2人は隠れる。暴行の疑いだが、実は恐喝されている下級生を不良から助けたのだ。しかし、被害者が名乗り出ないので一方的に悪者にされている。実は家庭クラブ員の藤岡がその被害者で、彼は兄の自殺のショックで緘黙になっている。兄は安田のクラスの生徒だった。話は藤岡が証言するにいたる経過だが、江藤と真田の掛け合いがよくできている。真田のキャラクターが実にかわいい。最後に教員になった真田が登場する。爽快である。役者はみんな達者でよく芝居をしている(しっかり受けている)。ドラマになっている。
上演5 宮城県名取北高校 「好きにならずにはいられない」 作、安保 健+名北演劇部
ホリ全面使っている。町の遠見がある。屋上である。手すりか柵が、象徴的に斜めに構成されている。前に長方形のボックス2つ。人が座る。ホリをブルーにして転換すると、遠見が倒れて柵が移動し、Sea Side Parkの看板と水飲み場が出てくる。2つのボックスがつながる。前者がアキと今野(タマ)の場面、後者がアキと妹幸の場面になる。後者は津波の後には瓦礫状態に変化する。
ボックスにはライトが仕込んであったようだ。ホリに上手く柵の影を出していた。
津波で亡くなった妹が心を寄せていた男の子に、姉が結婚を迫るという状況から始まるが、観客には事情が分からないので、異常な女の奇行と見える。男の子のほうも不登校の気弱な子で、最初はなんだかよく分からないが、コロスの動きも手伝って、不思議な感覚にさせられる。その中で妹との場面は普通の感じで進む。
後半、男の子が幸のことを思い出すあたりからリアルな芝居になる。アキに言われて幸に心の花束を渡す今野(しぐさだけ)。受け取る幸。幸の、鳥が飛ぶように去る姿が喜びにあふれている。妹の造形が純真そのもので良かった。役者の体の動きはみんな良い。
これは要するに「むかさり絵馬」であって、死児に、こうあって欲しかったあるべき未来の幸せを描く行為なのだろう。それが主題だとすれば、前半の奇妙なやり取りは、姉の執念を表して実に強烈ではあるが、少し過剰ではなかったか。
中割幕が1間半ほど開けて狭めてある。そこからホリが見えて、雲が投影されたりする。あとは10個ほどの黄色いプラスチックケースを使うだけ。衣装も、久美子以外は体育の半袖シャツ、短パンが基本。
小学生の頃から、小さな大人の心を持っていた自分のことを振り返るという作品。時代がシャボン玉ホリデーの頃で、自分には懐かしいが、今の生徒にはどうなのか?
太宰が人間失格と見たような自分ではなく、やや傲慢な自信家である。その前に哲夫という、他の子とは異質な男の子が現れ、そんな久美子の心に大きな影響を与える。哲夫と一緒に海のほうの哲夫の家まで歩く経過が主たる場面である。何もない舞台を歩く2人。途中の川、稲藁の山などの表現。(川はやっぱり受けるんだなあ。)
小説を脚色したものなので(自分はこの作品を読んでいないが)、心情は独白になるからわかりやすい。場面を表現するのには、さまざまな身体表現を用いている。
音楽は特徴的だ。台詞のところだけ急に音量を下げる。つかスタイルか、そのタイミングはなかなか難しかろう。
県大会で観て2度目になるが、あまり変わってはいなかった。
ようやくここまで書いて疲れた。明日は深夜帰宅なので、2日目の感想は後日になるだろう。