山形演劇鑑賞会第330回例会

 劇団スイセイ・ミュージカル
  「楽園」   作、演出、作曲、西田直木
 4月9日(月) 午後6時40分開演、午後9時20分頃終演(途中休憩15分、カーテンコール10分)
 山形市民会館 大ホール
 
 ハワイの日本人移民、日系2世の戦中戦後を描いた作品。
 日本軍の真珠湾攻撃を転機として、それまで良好だった日本人とハワイ原住民、アメリカ人との関係が悪化。主人公一家は、日本人学校の校長だった父が、日系人社会の指導者だとしてアメリカ本土の収容所へ移送され、持病の肺結核を悪化させて死亡。2世の長男星司は日系人の待遇改善につながればと第442連隊に志願。幼なじみである酒屋の息子富郎もいっしょに志願する。妹治子は農園で働く。ヨーロッパ戦線で富郎は戦死、星司も左手を失って帰ってくる。
 
 星司はハワイアンの巫女的な美少女レイラーニを知る。彼女は出生不明の子で、コアとイオラナの夫婦に育てられた。夫婦の実子で姉のカレアとその夫のキアヌとは三角関係になっている(キアヌがレイラーニに横恋慕、カレアは身ごもっている)。
 日米開戦が近い頃、ハワイアンだけが知る神殿での祭りをのぞく星司たち。踊るレイラーニのいい人として両親(族長的存在)に受け容れられる。
 真珠湾攻撃の日の朝、キアヌはレイラーニを強引に誘って真珠湾に出かける。無理やりものにしようとする時、飛来した日本軍機に銃撃されてキアヌは死ぬ。レイラーニの母はカレアに、2人は別々にいたと嘘を言う。
 ヨーロッパの戦地から届いた星司の手紙を、妹の治子はレイラーニに届けるが、留守である。姉のカレアに預けるが、カレアの日本人憎悪の言葉に激して、思わず真実を告げてしまう。キアヌはあの日、レイラーニと一緒だったと。
 カレアは嫉妬に狂い、手紙を書き換えて渡す。星司は戦死した、海の底で再会したいと言っていたと。
 折しも、片腕になった星司が帰国する。すぐにレイラーニの家に行くが、すでに偽りの手紙を読んだ彼女は神殿へと向かっていた。後を追う兄妹、レイラーニの両親。彼女が崖から身を投げる瞬間、星司が手を取るが2人はそのまま海の底へ…。悲嘆の末に治子は款黙となり、誰とも話さないまま、戦後数十年が過ぎる。

 ある日本人女性が治子を訪ねてくる。その女性は繰り返し不思議な夢を見るのだと。自分がハワイアンで、日本人男性と手をとって身投げするというイメージである。車椅子の治子はその顔を見て「レイラーニ!」と声を出す。そうして語られたのが上述の話である。
 
 すべてが直球である。急上昇、急降下しながらも進路を一直線に進んでいく。展開が速過ぎる気もするが、いっそ気持ち良い。ミュージカルはこうあるべきということか。役者さんもバイタリティー溢れる演技で2時間40分を駆け抜ける。サービス精神いっぱいで、終演後の見送りでは握手、ロビーで懇談会も行われた(自分は帰った)。開演前にもロビーでフラダンスの披露があった。
 多彩な照明、LEDライト(1本のライトで色が変わっていく)、ムーブライト、全体にスモークがかかって光条が木漏れ日のように見える。吊り物(樹木)の多い装置、数多い転換には紗幕と暗転幕を多用している。
 プロセニアム内を縁取る大きなハイビスカスの花の絵。奥に広がる椰子の木のある浜辺。「南太平洋」かと思う。中央に開帳場の台、上・下の移動する階段とともに家屋や神殿を構成する。
 踊りはしっかりしている。大勢でのフラダンスはまるで常磐ハワイアンセンターかと(スパ・リゾート・ハワイアンズか)。
 歌、台詞はすべてマイクで拾っている。だから台詞の聞こえ方は違和感がある。しかし音楽が多いから、それに負けないように、仕方がないのかもしれない。